小説
□その時は
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後に残った2人に沈黙が訪れるも、チラリと覗き見ていたターレスが耐えきれないとプッと吹き出した。顔を背けて肩を揺らす相手を薄く睨み付けるバーダックが、「何だよ」と低く呟き自身もフイッと明後日を向く。
「くく…アンタの方がガキかよ…口尖らせて……」
「ウルッセェよ!どうせならその減らず口閉じて寝てやがれ!クソガキっ」
「やだ。」
「――――チッ、面倒臭ぇなテメェはっ!」
「楽しい、んだと思う…」
「は?」
「アンタと、話すの、嫌いじゃない……何か…色んな……こう、何て言えばいいのか分からないんだけど、………う〜ん……」
「…思考が似てっからだろ?」
「え?」
不透明な考えに思わず首を捻ってしまったターレスに、バーダックは黒い瞳を周囲に走らせて答える。
「第一に戦闘、次には喧嘩、そんで破壊を求めて…」
「…て……?」
「それでもまだ物足りない、だろ?」
ゆっくり向けられた瞳は先日の闇に光るそれと同じもので…
ターレスはやはり言葉をなくす…
閑散としていた荒れ地をさらに一掃した大地に吹く風はどこか機嫌が悪く、時折目を開けてるのも厳しい程の突風が2人を襲った。
しかめるようにしてそれをやり過ごすバーダックと、風以外の事も思いキツく目蓋を閉じるもう一人。
そして不機嫌な風が過ぎ行けば、笑むように細く覗かせた黒はもう狂気を纏わず楽し気だった。
「気付いてんのかと思ってたぜ?」
「……え?」
「テメェが確かめるような挑発するからな。…ただの気まぐれか?」
「ん………いや。多分、何となく…どこかで思うものがあったのかも。―――同類って。」
「同類、な……」
再びクッと笑ってバーダックは復唱してみせた。
遠くで聞こえる破壊音と時折輝く空。
順調に進んでいるのだろう仲間の仕事を思い、バーダックは鼻を鳴らしてからターレスの隣に寝転がった。並ぶのではなく足を向ける辺り、この男も大概に社交性の無いヤツだな、とターレスは小さく笑う。
そんなターレスなど露知らず自らの片腕を枕に、更に背を向けるように横になってしまったバーダックが程なくして寝息を立て始めたのを、思わず身を起こして呆れて見つめる……
(なんだよ…俺が子守り?)
クスクスと肩を揺らしていたターレスだったが、ふいに表情を無くしてそのまま眉を寄せた。
あの背を目がけて……
残りのエネルギー集めた弾でも飛ばせば……
あの男を……
殺せるだろう……
バーダックの無防備な背後に黒が霞む。
吹き付ける強風にやられたわけではないのに。
砂に粘膜を傷つけられたわけではないのに。
何故か――――
ターレスの褐色の頬に、滴が伝い落ちていた。
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