小説

□着陸。
1ページ/3ページ





本日も爽やかな快晴。
いつものように悟空とバーダックが。そしてラディッツと悟飯がそれぞれにトレーニングに汗を流していた。

こじんまりとした湖で身体の汚れなどを落とし、休憩の時間にと持たせてもらった軽食を広げる。
…と言ってもサイヤ人が四人(一人ハーフ)もいれば軽食も山盛りだ。

食後バーダックが少し離れた場所にある大木に寄り掛かりながら、タバコをふかしているのを悟飯が見つける。
それに気付くと、ナイショな と言うように人差し指をそっと唇に近付けてニヤリとした。


自分の母に気兼ねしているんだなと悟った悟飯は申し訳なさそうに眉を下げて微笑んだ。



その時――――




「!!」
「―――悟飯!!」



父親の慌てた呼び声の意味を理解した悟飯は大声で、はい!と返事して
「お爺ちゃんも来て下さい!」
と訝しむバーダックの腕を取った。


急いで父と叔父のいる湖の畔に帰ると、既に瞬間移動の準備をしているのを見付け駆け寄った。


「…何事だ?」
「わ、わかんねぇよ!いきなりカカロットが来いって……」
「一度家に帰って、すぐ行くぞ!」
「はい!!」


シュッ

と、風を切るような音と共に景色が歪み一瞬にして湖畔が消え、自宅外で洗濯に勤しんでいたチチの前にいきなり現れた。
ビックリして尻餅つき文句を言ったチチに わりぃとだけ言い、急いで着替えるべく室内に引き入れた。


「ものすげぇでけぇ気を感じた!何かが地球に来たんだ!!」


意味も分からず連れ帰られたバーダックとラディッツが顔を見合せた。


「二人はあの機械付けたほうがいいかもしんねぇぞ?」


耳元をトントンして示しているのがスカウターと分かり、ラディッツが取りに行ってくる と部屋を出た。


「…敵か?」


ニヤリと好戦的な笑みを浮かべてバーダックはトレーニング様に着ていたシャツを脱ぎ捨てる。
それに合わせたかのタイミングでラディッツがスカウターと戦闘服を持って入って来た。


「わかんねぇけど、あんま気分のいい気じゃねぇなぁ〜」


いつもの派手な胴着に着替えて、緊張感無い物言いの悟空。戦闘を好む民族の血は良く知っているため、バーダックもラディッツもどこか楽しげな次男に同調した。


「精々やられんじゃねぇぞ?ラディ?」
「嫌味すぎるぜ親父……」
「あははは。兄ちゃんすぐやられそうだからあんま無理しないほうがいいぞ?」
「お前まで言うか!?」


ちょっと前までなら考えられないような掛け合いに、それぞれ自然と笑みが浮かぶ――







「んじゃ行ってくっか!」


悟空が軽く伸びをした後、額に指をあてて気を探り始める。


「ま、まてよ。カカロット!いきなり敵の真前に出るつもりか!?」
「その方が早ぇだろ?」


慌てて制止に入った兄に、怪訝な表情で答えた。首を捻る悟空は続いて悟飯、バーダックにも なぁ? と言いたげな視線を投げる。


「父ちゃんどう思う?」
「あ"ぁ?っつったって俺は瞬間移動なんて能力なかったからな。んな便利なモンがあったなら、敵のど真ん中に出て気持ち良くぶっ殺してただろうな……」


クククッと笑いながら言うその顔は何とも黒く、楽しげだ……
戦闘民族サイヤ人の中でも無類の戦闘好きだったのだろうと、それを窺い知って悟飯は少し後退った。


「親父は無鉄砲過ぎるぜ?慎重なチームプレーだって必要だっただろ?」
「お前、俺のチーム覚えてねぇのか?」
「えっ――あ、あぁ……」


返ってきた呆れたような答えに、ラディッツは言葉を濁した。そして即座に浮かぶメンバーの顔……

苦笑いしかなかった。
リーダーである父親を始め、はみ出し者の集まりのようなチームで詳細な作戦など練るはずもなく――

しかし仲は良かったな、と当時を振り返り思うラディッツ。よくメンバーで飯を食いに行った覚えがある。……と言っても大人は殆ど酒ばかり。
当時いた、自身と余り変わりない年齢の青年もチビチビと付き合うように飲んではいた。あの時の大人達が呑んでいたのはかなり度数の高い酒だった。一度面白半分に口にして酷い目にあったのを覚えている。
あの青年は自分に比べて戦闘力が高く、若くして父親たちのチームで地上げして働いていた。
下級戦士に有りがちな、父親に似た―――

(名前は確か………)



「僕も、少し慎重に行った方がいいと思います。お父さんは確かに強いけど、宇宙人だとしたらどんな能力を持っているか分かりませんから―――」


ラディッツの思考が引き戻される。悟飯の意見に、それもそうか と納得した悟空は気を探る相手をかえた。

敵と思われる気に一番近そうなのは……と調べれば、悟空のよく知る気が近くで移動中だった。


「んじゃ取り敢えず近くに行こう!」


空いてる手を息子に伸ばし、それを悟飯が繋ぐ。バーダックとラディッツはそれぞれ悟空に触れた。


シュッ――


風を切る音と共に四人が孫家から姿を消した。






.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ