小説

□記憶2…ある意味最強…
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――その時、ブルマは自分のラボでブレイクタイムにとコーヒーを飲んでいた。

っぷは〜と似つかわしくない音を発しながら、設計書類や自分へのDMが散乱するメインデスクにカップを下ろす。
すると手元に重力室の備品などの発注用紙が触れた。


(よく毎日毎日飽きずにあんなトコに入っていられるわよね〜)


横目でそれを確認しながら呆れ顔で思う。
ふぅと溜め息ついた拍子に、置いたカップがカタカタと小刻みに揺れるのに気付いた。

(地震かしら?)


ふいに感じた揺れに少しドキリとした。
自然と窓の外の景色に視線が向く。

(――げっ!)


普段本人が自身を賛美して言う、『眉目秀麗なレディ』なら絶対言わぬだろう、率直な反応……

重力室が、輝いている。

朝日が登った描写さながらの光景だ。
球体にはめてある窓から漏れる眩しいくらいの光のエネルギー。
ブルマには多いに見覚えがあるモノだった。

(っあのバカベジータ!あーゆーのは極力やめてって言ったのに!!)

ガタガタと音をたて始めたラボの窓ガラスにへばりついて鬼の形相に変身してゆく……

慌てて、重力室に連絡をとれるモニターのスイッチを押した。

映し出された室内は、光々としていてよく見えない…
けれど音はよく聞こえた。爆音とまではいかない。何かが渦巻くような…恐ろしく綺麗な音楽のようで――

ブルマは異様な光景とその伴奏に一瞬目を奪われていた。

(……って、見惚れてる場合じゃないわよ!)

「ベジータ!」


モニターに向かって叫んでみたが、姿は見えないし聞こえてるのかも定かではない。

ぐずぐずしていたら重量室が吹き飛んで大爆発してしまうかもしれない!慌てたブルマはモニターと音声をMAXまで上げて、すぅ―と思いっきり息を吸い込んだ。

「ベジぃーータぁー!!!」

漫画のように効果音が目に見えるのだとすれば、キーンと耳をつんざく様なブルマの叫び――

そして同時にモニターにどでかく表示された、怒り浸透の青い髪の女――

パッと光が消滅して現れたコントロールパネルの両側に、ずっこけるようにして耳を塞ぐ人が二人見えて驚いた。


「えっ――?孫くん??」


大音量で聞かされる嫌いな野郎の名前に、ベジータの方が早く跳ね起きた。


「っっなんつぅ騒音だ!この馬鹿女!!!」


自身の四倍ほどあるモニターから見える蒼い瞳を睨み付け、力の限り声を張り上げた。
怒りのためか、握り締めた拳がプルプルと震えているのがよく分かる。


「だっ、だぁれが馬鹿ですって〜!!
馬鹿はあんたじゃないのよ!このバカっっ!!
重力室破壊するつもり!?それどころかウチまで吹き飛びそうだったじゃない!ちゃんと忠告したことも守れない方がバカって言うのよっ!
大体、孫くんも孫くんよ!こんな所で暴れないでどこか広いトコに行きなさいよね!!戦闘馬鹿二人に都壊滅させられちゃうじゃないのよ!!」

「――っっうるせぇ!!」


デスクをバンバン叩きながら容赦なくまくしたてるMAX音量の怒鳴りが、部屋中で反響してキンキン言っている…
耳が壊れる――と思いっきり塞いでみるが、響く音は手加減してはくれず……


ムキになってモニターに声を張り上げるベジータだが、かき消すほどのブルマの怒鳴りに眉をしかめるしかなくなる……


(……何なんだこの女)


騒音に顔を歪めてバーダックが立ち上がり、両耳に指を突っ込む。
やれやれと思いつつ、久しぶりに見る王子の慌てぶりに苦笑いする。


(いい加減耳がいてぇんだが……俺の声は届かねぇだろーなぁ)


モニター越しに睨み合っている両者を見比べて溜め息をもらした。
肩を竦めるようにして、おもむろにコントロールパネルに歩み寄り、重力オフのスイッチを押す。

照明が揺れ低い振動と共に身体が軽くなった。
赤く淡い色を放っていたライトは通常の輝きに戻り、一度瞬きをしたベジータは振り返ってバーダックを睨む。

フンっと鼻を鳴らしてその視線を交わし、腕組みをしてモニターに向かった。

ベジータに並んで立ちマジマジとブルマを眺め始める―――

それに気付いた彼女も、まだ文句言いたげな口元を戻し少し首をかしげた。

あら?と思う。
目の前には自分のよく知ってる孫悟空……
しかし見れば見るほど違和感がある。

醸し出す天真爛漫な――思わずつられて笑顔になってしまうような――そんな雰囲気を感じない。
まるで威嚇されてるような…蛇に睨まれた蛙の気分にさせられてる感じだ。

何より跳ねた髪や顔は同じだが、『彼』には頬に目立つ傷がある。

思わず凝視してしまった『彼』の口角が僅かに上がったのを、訝しげに思った。

ブルマの友人、孫悟空は自分に対してこんな顔はしない。彼女の疑惑が確信に変わる――


「あんた……誰?」
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