小説
□記憶
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――――何気なく装着したスカウターに強い反応がちらほら見つかる。
もちろん、近くで察知してるのは自分の家族のモノ三つ。
所々に自分の足元にも及ばないだろうが、地球人にしては大きな反応はある。
その中でもずば抜けて高い数値に興味を抱き、バーダックはそのまま飛行を始めた。
自分はサイヤ人の中でも戦闘力の高い種類に属していた。
その辺のエリート戦士よりよっぽど強かったと自負している。
さらに地獄でも戦闘を重ねていた自身は、死んだとき以上の力を得ている。
そんな自分と近い数値を見つけたとたん、ウズウズするような興奮を覚え、無意識に飛び立っていた。
かなりの距離を飛んだ頃、大きな都市が見えてきた。
スカウターで調べながら進むと、周囲より何倍もありそうな建物に目標がいるのが分かった。
上空でピタリと停止し、観察して見ようか……と思っていたところ、急にピカっと眩しいものが視界に入った。
ひょいとかわして、飛んできた気弾を見送る。
ニヤリとして放たれたであろう地点を見下ろすと、丸い物体の横に一人の男が腕組しているのが見える。
途端に、バーダックの表情が変わった。
目を見開き、見間違いではないのかと、しばたかせる。
心がザワザワと音立てるのが、煩く耳に響いてきた…
数秒の間を置いてバーダックはハッとしたように動き出した。
両手を腰にあてた姿勢のまま急降下し、男の目の前に静かに降り立つ。
男もバーダック同様目を見開く……
………
両者、しばしの沈黙が流れた。静かな葉の擦れる音に金縛りを解かれる、不思議な一瞬――