紫草の野

□たまぼこの
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兵庫水軍の船は一週間の航海を終えて久しぶりに陸地へと着いた。
各々が上陸の準備を着々と進めていく。
ハイティーン組は早くも町に出る算段を立てながらそわそわと落ち着きがない。


今日の買い出し担当は水練の二人のため舳丸と重は買い出しの準備をして船を降りようとしていた。
「お!俺も町にいってくる」
続いて義丸も下船する。
「義丸の兄貴。遊びすぎも程々にしないと刺されますよ。」
「大丈夫、大丈夫。あ、それと帰りは明日になるから俺の夕飯はいらないよ。」
やや呆れたように言う舳丸に飄々と笑いながら答える。
「出掛けるのか義。」
鬼蜘蛛丸は感情を押し込めたように声をかける。
しかし、髪で影になり表情が見えない。
「あぁ。鬼さんちょっと遊んでくるよ。」 
「…そうか」
義丸はそういうと颯爽と町へ出掛けていく。
水練の二人組も鬼蜘蛛に一礼しすぐに町へ向かう。
誰一人として気づくことはなかった。
暗い焔を宿した鬼蜘蛛丸の瞳に。
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