匂へどもしる人もなき桜花

□学園探索
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暫く歩いていると前方に小屋の様なものが見えてくる。
「あれは何の小屋だ?」
美月の言葉に竹谷が答える。
「あれは生物委員会が管理する。飼育小屋だ。」
「飼育小屋…見学は可能か?中にも入りたい。」
その言葉に五人は顔を見合わせる。
「中に・・・・ですか?」
「無理なようなら別にかまわない。」
その言葉に五人が再び顔を見合わせる。
「どうする八?」
「近くまで見に行って先ずは様子みないと分かんねえな」
矢羽でのやり取りの後に美月を振り替えって笑顔で答える。
「先ずは近くまで見に行ってみましょう。」
その言葉に美月は頷き近づいていく。
飼育小屋の前まで行くとそこには動物たちがこぞって美月を見ている。
「可愛いな。」
そう呟くと、美月は近づいていき、手を差し出す。
それを見て竹谷は慌てて止めようとする。
「天女様勝手に近づいては・・・・え?」
そこには美月にすりよる狼の姿があった。
「中に入れるか?」
その言葉に呆けていた五人は戸惑いながらも頷く。
「俺が鍵を開けます。」
問題ないと判断したのか、竹谷が鍵をあけにいく。
カチャカチャ、ギイ…
扉を開けると美月は目を輝かせながら入っていく。
すると待ちきれないように動物たちが美月飛びかかっていく。
「危ない!」
誰かがそう叫ぶがそこにあったのは美月を襲う動物ではなく、じゃれつく動物と美月の姿であった。
その姿に竹谷は戸惑う。今までの天女には動物たちが殺気だっていたのに、今回は殺気だつどころかじゃれついていた。
「私は昔から動物に好かれやすい質だから、驚くことではない。それにしても随分多いな。」
美月は驚く竹谷を横目に狼達を撫でながら話し出す。
「怖くないのか?狼」
「怖い?敵ではないのに何をおそれる必要がある。第一一番怖いのは人間の方だろう。」
「えっ?」
「・・・・何でもない。可愛いな…」
そういうと美月はわしゃわしゃと狼を撫で始める。
「よーし、よしよし」
『ム、ム○ゴロウさん?!』
その姿を見て思わず五人の心の声が重なる。
「この子達の名前は?」
「花子と太郎です。」
美月の言葉に反射的に答える。
「花子と太郎か。私は如月美月という。宜しくな。それにしてももふもふ。」
美月は自己紹介をすると狼に顔を埋めて抱きついた。
狼たちはそんな美月の側でじっとしていた。

満足したのか、ある程度撫でると立ち上がった。
「名残惜しいが他も見て回る、次に行くぞ。それから、時々この飼育小屋に入りたいのだが、誰の許可を求めればいい?」
「なら俺に声をかけてくれ。俺が生物委員会委員長代理だから。」
戸惑いながらも答えた竹谷を横目に美月は歩き出す。
「分かった。」
美月は名残惜しそうに飼育小屋を一度振り返ると再び歩き出した。
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