紫草の野

□勿忘草
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「義丸明日俺が死ぬって分かったらどうする?」
「なんだ?藪から棒に。」

何でもないいつもの日常に突然鬼蜘蛛丸は、訳の分からない質問を義丸に投げ掛ける。

「いいから、答えてくれよ。」
鬼蜘蛛丸は手にもった湯飲みを置き、身を乗り出す。
「そうだなあ。もし、それが病なら最後の一瞬まで側にいて、助かる方法を探すさ。」
続きを促すような視線に義丸はお茶を一口啜る。
「ただ……」
「ただ?」
義丸は湯飲みをことりと置く。
その瞳に昏い炎がともる。
「それが、船戦ならば、相手を殲滅してからその命を出した城を落とす。」
「一人でか?」
「あぁ。」
「もし、それを落としたらどうするんだ?」
「……そうだな。その屍を全部海に沈めてお前の墓標にするかな。」
「随分物騒な墓標だな。」
思わず乾いた笑いがもれる。
「だが、なんで急にそんなこと聞くんだ?」
「いや、最近物騒だろ?結構ここいらへんに忍も増えてきた。」
「確かにそうだが、お前が心配する必要はねえよ。」
「そうか?」
「そうだ。」
そう言うとまたお茶を一口啜る。
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