匂へどもしる人もなき桜花

□学園探索2
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学園の外をある程度見て回った美月達一行は学園の中を探索することにした。
「それにしても、本当に歩くたびに穴に嵌まっていたな。善光寺。」
美月は呆れたように伊作を見やる。
「天女様少し違います。善法寺です。」
伊作の冷静な突っ込みに美月は少し考える素振りをみせる。
「そうか、しかし善法寺は長いな。もう少し呼びやすい名前がいいな。」
その言葉に、伊作は笑顔のまま答える。
「それならば伊作と名前で呼んでくださ「不運でいいか。」・・・・い。」
被せるような台詞に伊作はがっくりと肩を落とす。
「大分外は見て回ったから、中へ行くか。」
そのようすを気にせずに中へと入っていく美月を6人が追いかけていく。
「どちらから案内をしましょうか?」
気を取り直した伊作は先頭を歩きながら尋ねる。
「そうだな、必要そうな所を重点的に。事務室、食堂、医務室、職員室、図書室が行きたい。」
「それならば、食堂が近いから食堂から行こう。」
尾浜が考えながら答える。
ぞろぞろと連なる一行は端から見ると妙なものである。
「多くないか・・・・」
美月の言葉に不思議そうに6人は振り向く。
「何がですか?天女様。」
伊作が代表して聞く。
「人数が多すぎる。こんなに道案内いらないから用事ある人はそっちに行け。」
その言葉に周りは戸惑うが、その言葉に雷蔵が思い出したように言う。
「そろそろ委員会の当番だから僕はもういきますね。」
そう言うとそそくさと去っていく。
「俺もそろそろ委員会なのだ。」
続いて兵助が抜けていく。
「私も薬の補充があるから。」
伊作が抜けた。
残ったのは三郎、尾浜、竹谷の三人になった。
すると、「竹谷先輩!」
慌てたような声が四人を引き止めた。
「どうした?」
振り向くと井竹模様の男の子が走りよってくる。
「何かあったのか虎若?」
その言葉に虎若と、呼ばれた男の子が慌てて答える。
「毒虫たちが勝手に散歩に行ってしまいました!」
「な、直ぐにいく。失礼します。天女様」
竹谷は慌てたように別れを告げて走っていく。
走っていく後ろ姿を見ながら不思議そうに尋ねる。
「勝手に散歩に行った?どういうことだ。」
その言葉に三郎が答える。
「生物委員会は直ぐに毒虫たちが散歩に行くんだ。しかも知らない間に勝手に。」
「それって脱走ということか?」
「そうともいうね〜」
「そうとしか言わねーよ。」
呑気な尾浜に美月がつっこむ。
「まあ。大丈夫ですよ天女様。私達が守りますから。」
「その必要はない。自分の身ぐらい自分で守れる。」
「天女様に何かあったら俺達が悲しいんです。」
「・・・・・・・・・・分かった。」
その言葉に渋々頷き歩き出す。
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