匂へどもしる人もなき桜花

□学園探索
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着替えが終わると美月は部屋の詮索を始めた。
シンプルな机の他にはなにもない。
その時、扉に影ができる。
「天女様入ってもよろしいでしょうか?」
その声に周りを詮索していた美月は手を止めて、扉を見る。
「かまわない。」
その言葉に扉が開いた。それは一人ではなく、青い装束を着た五人の男子生徒だった。
「何のようだ?」不思議そうに聞く美月に同じ顔をした内の一人が笑顔のまま話を続ける。
「天女様がいらしたと聞いて、お話をしてみたくなりまして。」
にこにこ話を続ける双子の片割れをみて 美月は僅かに眉をひそめる。
「せっかく来てくれたのに悪いんだが、これからこの学園を探索するから、話は後にしてほしい。」
「それならば俺たちと一緒にいこうよ!俺天女様ともっとお話ししたい!」
髪型が特徴的な男がにこにこと提案する。
美月は僅かに眉をひそめる。
一見すると笑っているように見えるが、その笑顔はまるで張り付けたようであった。
暫く美月は何かを考えるような素振りをすると、外に出る。
「好きにしろ。」
その言葉に五人は戸惑いながらもついていく。
「て、天女様どちらにいかれるんですか?」
同じ顔をした内の一人が不思議そうに尋ねる。
「探索だ。あちこち見て回る。ところでお前ともう一人同じ顔がいるが、双子や兄弟にしては違和感がある。親戚か何かか?それとも変装か?」
その言葉に五人は驚きながら立ち止まる。
「この天女は俺達の事を知らないふりをしているのかも知れない。」
三郎は素早く矢羽を飛ばす。
「ならばその設定に乗るしかないね。」
尾浜も矢羽を返しながら、美月に笑顔で話しかける。
「最初に天女様の部屋で声をかけたのが三郎です。今話しかけたのが雷蔵。三郎は雷蔵の顔を借りて変装してるんです。」
「見事な変装だな。」
「天女様にそう言っていただけるなんて光栄ですね。私は変装名人こと鉢屋三郎です。それで此方が不和雷蔵。」
「俺は尾浜勘衛門。天女様宜しくね♪」
「・・・・久々知兵助。」
「あー。竹谷八左衛門だ。」
髪型が特徴的な男がにこにこと自己紹介をすると、黒髪の美少年も自己紹介をする。それに続くように、戸惑いながらもボサボサ髪の男の子が自己紹介をする。
「そうか、私は如月美月だ。
天女様ではなく、是非名字で呼んでくれ。えっと鉢屋三郎に不和雷蔵、尾浜勘衛門、久々知兵助、竹谷七左衛門か。覚えた。」
「一左衛門足りないっ。」
竹谷が慌てて突っ込む。
「そうか竹谷八左衛門か。覚えた。多分。」
「プッ・・・・あはははは!八、今度から七って呼ぼうか?」
尾浜は耐えきれなくて吹き出す。
「お前なあ…」
竹谷はプルプルと怒りに震える。
「と、ところでどこから回るんですか?」
雷蔵は慌てて話題をそらす。
「あぁ。先ずは外から見てその後に校舎内を回るつもりだ。」
それだけいうと、すたすたと歩いていく。
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