U

□りょうく
1ページ/1ページ

トレカの話







なんでだ、なんでだなんでだなんでだなんでだなんでだ。
仕事の出張で2日家を不在にしていただけだ。冷蔵庫の中身がほとんどなくなっている。



もしかして泥棒?
金目のものは一切取られていないわ。なんでだ?なんでだ。







「ねぇあべ、
 どうしたの?」


『どうしたもこうしたも…』







そういえば何故か家が綺麗だ。ほこり一つもない。洗濯物もベッドに放り投げてあったのにクローゼットの中にきちんと畳んである。


新種の空き巣?
久しぶりに会ったリョウクはソファーに横になってうろちょろしている私を眺めている。








「ねぇあべ〜」


『なーに』


「部屋キレイでしょ」


『うん、
 あ、リョウク、か……』








リョウクがやったらしい。
流石リョウク。女子力が高い。これ言うとリョウクに「僕は女子じゃない!」って怒られるから言わないけど。じゃあなんで冷蔵庫の中身がないの?





『リョウク、私がいない間に』


「来たよー
 2日。ご飯作って食べたぁ
 メンバーみんなとね
 あべの秘密を暴こう大会してたから」


『は?悪趣味〜
 変なとこ見てないでしょうね』


「ん、エロ本はなかったぁ」





なんだよそれ。満面の笑顔でエロ本の話するやついるかよ。しかも女でエロ本持ってるなんてドン引きでしょ。リョウクはキャハハと一人で笑う。



「でもねあべ、」


『ん?』


「僕だけ変なの見つけた」


『へ?な…に?』




リョウクが上半身を起き上げ、ジーンズのポケットから何枚かカードを出した。トレカだ。私のトレカ。しかもなんと全てリョウク。私は顔がかあっと赤くなった気がした。リョウクはにんまり笑う。


『それは、たまたま全部リョウクだったん、だよ、』


「でも嬉しいよ」


『あぁ…うん』


「あべ、
 僕のことだあいすきだよね」


『あぁ…うん』






実を言うと、私リョウクが出るまでCDを買いつづけていた。
それはリョウクには一生言えないだろう。






( このトレカのリョウクが
  一番イケメン。
  で、このトレカが一番可愛い。で、 )
( うんうん! )
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ