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□スイッチ
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パンツ下さい
『やっぱり考え直してよ、
…ドンヘェエエ!』
「うるさいな、もう」
彼女のあべは僕の足に縋り付いてくる。いや別れるとかそんな重大なことじゃないんだけど。
ただ、明日から泊まりがけで仕事の収録があるだけだ。なのにあべは「行かないでぇ」とか「考え直して!」とか言って俺の足に縋り付いてくる。
『ドンヘ〜、
行かないでよ〜』
「仕事なんだってば
離せー」
『仕事とか言っといて
ヒョクと二人で旅行かっ?
酷いよー!』
「なんでヒョクなんだよ」
『ドンヘの匂い嗅げないの、
死ぬ。』
「あっそ」
『死んでもいいの!?』
「俺にどうしろと…」
『パンツ置いてって!』
「は?」
彼女は足に縋り付いたまま言う。あべは時々変なことを言い出す。ああ、心配だ……、将来とか、心配だ。
俺はあべの頭を小突いた。あべは「いって!」と頭を押さえている。
『パンツが嫌なら、
…でもやっぱパンツがいい』
「この変態野郎、
はやく離れろー」
『いーやーだー』
「あ、じゃあパンツあげない」
『ハイ』
あべは素直に俺の足から離れた。俺はその隙に玄関に走った。あべは高速で俺の後をついて来る。玄関まで来て俺は靴に履きかえた。
するといきなり玄関の戸が開いた。ヒョクチェだった。ヒョクチェは「よ!」と言って俺と彼女に手を振ってくる。
「あ、ヒョク」
『うわあ、やっぱり
ヒョクと旅行行く気か!
くっそ!私も連れてけ!』
EH「あべ?どしたの?」
『…ヒョク、』
EH「ん?」
あべはヒョクチェを見上げてじっとしていた。ヒョクは首を傾げている。
『ヒョク、パンツ下さ』
すぐにあべの口を後ろから塞いだ。あべは両手を上に上げてバタバタさせている。ヒョクは目を丸くして俺と彼女を交互に見つめていた。
「ヒョク、はやく行こうか」
EH「う、ん?」
『ドンヘェエエエエエ!』
俺は家の鍵を閉めた。
あべの俺を呼ぶ声がなんかすごく愛しく感じた。
( ドンヘのパンツ… )
( おいなにやってんだお前 )