宵の明星、魂は輝く

□女狐の走駆
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「どうしたのです、父上。夏季、秋季も」

現れたのは、濡れたように艶やかな黒髪の持ち主。
四男の冬季だ。
切れ長の目が、兄弟二人に注がれる。

「どうしたもこうしたもありません!あげはがっ、あげはがむさ苦しいケダモノたちの巣窟で今にも貞操を奪われようと!!」

頭を抱えて青くなる秋季を久し振りに見た気がして、冬季はまじまじと彼を眺めた。

「あげはが、どうしたんだ」

「お前、真選組って知ってるよな」

「当たり前だ。江戸の武装警察集団だろう」

「そこで、あいつが働いてるらしい」






――ビシィッッ!!








空気が、固まった音がした。












「……なるほど、状況は理解した。さっそく京で名を争うほどの研ぎ師を呼んで、勒丸(ろくまる)を研いでもらおう。
春季兄上にも報告して、武器庫の使用許可も強制的にもぎ取ってくる」

くるりと踵を返した冬季の肩を、四季が全力で引きとめた。

「待て待て待て!何も理解してないだろう。なんだその据わった目は!落ち着きなさい!
それと春季には報告せんでいい!!」

「……それもそうですね。春季兄上の体調が悪化してしまったら大変だ。ただでさえ走って十秒で吐血するような人だから、
武器など重いものを持たせたら腕の骨を複雑骨折しかねない」



よし、と手を打ち。



「夏季、秋季、ともに江戸へ行こう」

『勿論』



「いやいやいや、勿論じゃない。意気投合せんでいい!手紙を出せば江戸に行く必要はなかろう!」





「ああ、その手がありましたね。小包テロ、いい考えです」

「オイィィィィ!!何をやらかすつもりだ秋季!!美濃家を潰すつもりかァ!?」

「いえ、偽装なら任せてください。アシの一つも残さずに完全犯罪にして見せます!」

「今犯罪って言ったよね!?確実に犯罪って言ったよねぇ!?わかった、分かったから落ち着きなさい!
そんなことをして、あげはが喜ぶわけがないだろう!」

この一言は強烈な薬の様で。

ふぉおおおお……と秋季の背後の妙なオーラが一気に収束していく。


「……すみません、取り乱しました」

「……うむ」




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