宵の明星、蜂は飛ぶ

□夜想譚
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「はじめまして!!ラグ・シーイングです!!!
 BEEの面接審査でキャンベル・リートゥスからやってきました!!相棒のニッチとステーキも一緒です!!
 本日はよろしくお願いします!!!」




ハチノス館内に突如響き渡った少年の声に、帰館したばかりで
一階ホールにいたクレンは、驚いて出入り口へと視線を転がした。

『あれ、コナーだ』

まずはポヨポヨとふくよかな体型の友人が目に
留まり、次いで銀色の髪の少年と金髪の少女の姿を認める。

『おおー……パンツ一丁か』

まだ何事かを叫ぼうとする少年を、コナーが必死に止めている。
それがなかなか面白く、クレンは上りかけていた階段を下りてそちらへ足を向けた。

『コナー!』

「あ、クレン!帰館報告かい?」

『そ。それよりこのパンツ少年、誰?』

「あはは、さっきの聞いてただろう?面接審査を受けにきた……」

「は、初めまして!ラグ・シーイングです。こっちは相棒のニッチとステーキです!!」

きらきらと輝くラグの目が嬉しくて、クレンは弾けんばかりの笑みを浮かべた。

『よろしく。私はクレン。こっちが相棒のノア。審査、受かるといいね!!』

「はいっ」

――アルビス種、か。
クレンはふと、脳裏に浮かんだ懐かしい顔に思い馳せる。
当時、今よりも奔放に振舞っていたクレンの見張り兼後処理係のように
世話を焼いてくれた仕事熱心な彼は、四年半くらい前から行方不明となっている。
ノアが、クレンの「こころ」の変化を敏感に察知して、額をこすりつけてきた。

「あ……あの、お金は結構です……」

ラグの困惑した声も手伝って、一気に現実に引っ張り戻される。
丁度コナーがラグの手を引いて、妙な勘違いからお金を渡そうとする人の輪を抜け出そうとしていた。
面接審査を受けにきたと言うのだから、館長室の方へ行くのだろう。
クレンも帰館報告をしに館長室に行かなければならない。

『のわっ、待ってコナー!』

ノアの額に背中を押されながら、クレンは慌ててコナーの背中を追ったのだった。

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