バハムート ラグーン

□Episode:0+1 放浪
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「最近多いんだよなぁ、他ん国で住む家が燃えちまってよぉ、一家揃ってキャンベル(うち)に引っ越してくる難民が。
ほれ、キャンベルは女王陛下の賢断のおかげで無傷だろ?」


戦火に焙られていない国ならではの口調であろうが、店主は得意げにそう述べた。



「ほかの国はひどいもんだからなぁ。特にマハールとゴドランドは壊滅的らしいからな。」

「……。」

「他んとこもよぉ、戦争なんかしないで、大人しくグランベロスに従ってりゃ良かったんだよ。」

「……。」


カスティリアは腹の中で舌を打つ。


戦争の業火に国が焼かれずに済んだのは、キャンベル女王がグランベロス帝国の降伏を受け入れたからである。

国家元首の采配を賢明ととるか愚昧と取るかは個人の自由であるが、仮に己たちが本当に難民だったとして、その発言は難民に対してあまりにも無遠慮ではなかろうか。



「で、あんたらはどこの出身だい?」

「………え?」


カスティリアは呆気にとられた。


「…カーナです。」


返答したのは厨房係だ。

彼も店主の無神経さに苛立ちを覚えているのだろう、注視せずとも分かるくらいに眉頭を寄せている。



「カーナか!
大変だったな〜、王様も死じまって王女様は囚われの身だろう?あれじゃ血脈再興も望めねぇなぁ。」

「!!」


ピクっと厨房係の身体が強張った。

その些細な変化を、カスティリアは組んだ腕から感じ取る。



「…おじさん、知ったような口を利くものじゃないわ。
この人、これでも刃物を持たせたら右に出る人がいないくらい危険なのよ。」

「……へ?」


カスティリアはついと目を細めた。

顎で隣の連れ合いを差し、視線で店主の脇を示す。


カスティリアの視線の先には、手の平サイズの小型ナイフが刃を白銀に光らせていた。



「目にも止まらぬ手さばきでね、確か…一番得意だったのは、解体、だったかしら?」

「!!」

「随分と多くの命をヴァルハラへ送り届けたわよね?」


店主の顔色が一転する。

目を縦にかっ開いて、厨房係を注視した。


「………え?」


厨房係は何のことやらと、目をぱちくりさせる。


カスティリアは構わず続けた。 



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