バハムート ラグーン
□Episode:0+1 放浪
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グランベロス帝国によるオレルス統治後、キャンベルにはゾンベルド率いる駐留軍が配備された。
言わずもがな、女王の居城であるキャンベル城と、眼下の城下町にはグランベロス兵士がウジャウジャいるだろう。
「キャンベルが森と大地の国であろうと、さすがに城下は賑わいがある。…よした方が得策だな。」
補給のためにも物資豊かな城下町に立ち寄りたくもなるが、状況がそれを許してくれそうもない。
「それに、グランベロス兵とかち合って、いらぬ喧嘩も起きそうだ。」
「い゛?!」
ちらりと、ビュウがラッシュを見た。
急に話を振られ、ラッシュは目を見開く。
振った張本人はニヤニヤして弟子の顔を覗き込んだ。
「お前、グランベロス兵相手なら狂犬の如く噛みつくだろう。」
「なっ!いくら俺でもこの不利な状況でそんなことしねぇよ!」
「あ〜、ラッシュならあり得そうだねぇ。」
「ビッケバッケ!てめぇ!」
「いいですか、ラッシュ。いかにグランベロス兵といえど、戦場でない限り斬ってはいけません。
平素でそれを行えば、人殺しと同じですよ。憎むべきは戦争と、それを勃発させた原因で」
「トゥールス!だからやらねぇって言ってんだろ!!」
「では隊長、キャンベルの片田舎、出来るだけグランベロス軍の分布が少なそうな地域に着陸します。」
「ああ、頼む。」
「俺の話を聞け!!」
「サラマンダー!」
トゥールスの呼びかけに、赤い鱗の戦竜は待っていましたとばかりに鳴き声を上げた。
サラマンダーの太い首の筋を優しく撫で、戦竜に作戦の指示を伝える。
作戦の意図を理解したのであろう、サラマンダーは再度猛々しく鳴くと、ゆっくりと飛翔の高度を下げていった。
キャンベルラグーンの影に入るつもりなのだ。
やや好戦的な性格がたまに傷ではあるが、従順で賢い良い戦竜である。
「ねぇ、アニキ。キャンベルって、自然がたくさんだから、美味しい果物とかいっぱいかな?」
小太り騎士がビュウに無邪気に問うた。
「ああ、そうだろうな。
俺も田舎の方角には降りたことがないから分からないが―――取れる作物は豊富なんじゃないのか?」
「わぁ!テードの皆にも持っていってあげたいね!」