星矢(Maine novel)

□First Ignition
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「…………またか。


女と女児は再び両者の身体を結び付けた。

先ほどにに増して熱い熱〜い抱擁だ。



「はぁ…。おい、保護者。」


俺は盛大な溜息を吐き、黒髪の女を呼んだ。


……。


女は女児をぎゅっと抱きしめて可愛がり、こちらを振り向きもしない。



「…無視か。ならばクソガキ。」

ユイちゃんはクソガキではありません!

ユイはクソガキじゃないもん!ユイだもん!


保護者と被保護者は計ったようなタイミングで俺に食らいついた。

息ぴったりだな。



「クソガ…ではなく、ユイ。
お前の保護者が迎えに来たのならば、俺はお役御免だな。」

「えっ。」


俺の言葉に、女児は小さく一驚した。


元よりその約束だったはずだ。

保育所の先生だが何だか知らないが、女児の保護者に無事に女児を引き渡せたらば、今日の俺を縛るものは無い。

まさかこんなに早く保護者が現れるとは思っていなかったが、せっかく湧いて出た空き時間だ。

用が済んだのならば、さっさと暇してしまいたかった。


「え。保護者が迎えって…カミソリのお兄さん。

カミソリは余計だ。

「もしかして貴方がユイちゃんを保護してくださった方ですか?」

「…聞いていないな。」


女児に続くように、女は目をぱちくりとさせていた。



「もしかして、ではない。そうだ。」




はっきり肯定すると、女は長い睫毛を(しばた)かせて口をポカンと開けた。

直後、ざっと音が立つかの様に素早く立ち上がる。

ささっと身支度を整え、俺に勢いよく頭を下げた。



「ご、ごめんなさい!私、てっきり」

「“てっきり”?」

「幼女つけ狙う変態カミソリ殺人鬼かと」

さ?!


殺人鬼?!!

しかもまたしても変態扱いか!



……今日という日は何なのだ。

12の至宝に名を連ね、多くの憧憬と羨望を集める俺が、このような侮蔑を何故受けねばならない。

俺の行動はそんなにも浅はかなのか?! 



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