星矢(Maine novel)

□First Ignition
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「クソガキ、貴様」

“いつか”は好きじゃない。永劫の時の中で、不明確な約束は約束なんかじゃない。

「!」


明朗なその台詞に、俺の口の先まで出かかった罵声が喉で停留する。

それはまるで、あの一瞬の超絶美女の言の音の様だった。


だが、この目に映る幼女は紛う事なき女児そのものだ。



「お、おい。クソガ」

「ユイ!」

「!」

「ユイはユイなの!くそがきじゃないの。」

「……あ、あぁ…そう、だった、な。悪い…。」


女児は突然俺を見上げた。

俺が女児の名を読み上げないのが不服であったらしい。プゥとフグのように頬を膨らませている。



「おい、ユイ。お前、今しがた」

「ねぇ、おにいさん。おにいさんはこいびとはいるの?

は?!


質問しているのは俺の方だぞ?!

それを無視して自分の疑問を捻じ込んでくるとは大した厚顔無恥だな。



「お前に関係ないだろう。それより、今」

「ふぅん、いないんだ。モテそうなのにね。」


余計なお世話だ。


俺は悠々自適な独身生活を桜花しているだけだ。


俺と結婚したい女など星の数ほどいるはずだ。

だが、女共のスペックと俺の伴侶への募集要項が合致するとは限らない。

申し訳ないが、ほとんどの女が落選だ。



「わぁ、なかなかさいていだね。」

「言っていろ、俺のような最高の男には最高の女が相応しい。」

「そんなこといってると、もらいそこねるよ。」

「あぁ、その辺りは重々注意して―――って、お前、何故俺の心の中を」

美子せんせいをおよめにしちゃえばいいよ。

はぁ?!!

「美子せんせい、きれい。すっごくきれい。きっとびっくりする。」

「あ、あのなぁ…。」


俺はあんぐりと口を開けた。

耳を疑うような台詞だ。

何故、この俺がチンクシャのクソガキの勧めで嫁を取らねばならない。


貴様の勧める美子先生とやらがどれだけ綺麗だか知らないが、所詮は東洋人。

“綺麗”のレベルは図らずとも知れている。


「美子せんせい、びじん。ちょうぜつびじょ。」 



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