星矢(Maine novel)
□First Ignition
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「あ、あれは…!
強い女性を例えた通り名だ!それほど貴女の姿が果敢であったと俺は言いたくて」
「ほら、やっぱり!」
「!!!!」
墓穴。
男の表情が瞬時に蒼白となる。
「ふふ、改めてお礼を申し上げます。
あの時は助けて下さってありがとうございます。」
「……お、俺は知らん。」
「とっても大きな方でビックリしました。熊さんかと思いまいしたよ。」
「く、熊だと?なっ…!」
人間ではない分、アマゾネスより酷いではないか。
反論しようとして男は口を噤む。
「でも熊さんにしては俊敏でしたし、肉体的にはゴリラにも似ているような…」
「ゴ…?!」
「そう、まるで熊の規格を持ち、かつゴリラの肉体を兼ね揃え、人間のように器用に動くUMAのような生き物―――正しくビックフットではないかと思って」
「恩を笠に着せるつもりはないが、命の恩人にその言い分はないのではないか?」
「ぷっ!」
「!!」
またも墓穴。
女の術中にはまってしまった。
それに気付いてももう遅い。
これでは言い逃れが出来ない。
「〜〜〜〜っ!!」
「ふふふ、ごめんなさい、誘導するようなことをして。」
頭を抱える男に対し、女はクスクスと鈴の音のように笑った。
「貴方はとても素直な方なのですね。」
「〜〜っ、素直なビックフットか?」
「まさか、スーパーマンです。」
「……?!」
「あ、信じていませんね。
でしたら総称してスーパーヒーローにしましょうか?」
どれだけ最強だ。
「………スーパーマンでいい。」
「ふふっ!」
女は再び笑みを零す。
とても愛らしい笑顔だ。