星矢(Maine novel)

□First Ignition
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俺は手元を振り返った。

この掌の中に、あるはず(・・)の感覚。


待て、待て、待て、待て。


情報が一致しない。

俺は今、頗る混乱している。


男にとって憧れのロマンであり、神秘であり、否応なしにその魅力に侵食され、時にその煩悩に苦悩さえ覚える抗い難し女の双丘。

さっきのあれは完璧だった。

俺が描く理想に寸分違わずマッチングしたパーフェクトな丘だった。

俺は確かにこの手でそれを弄った。


それが、それが…!



つるペタだと?!!!




さっきまで手中で溢れていた男のロマンは、いずこかへ消えていた。

ギュッと手に力を送ると、無くなった胸の質量分、硬質なイルカのブローチが俺の手のひらに突き刺さる。

熱を持っていたイルカは温度を失っていた。


「なっ、無い…っ!」


俺は顔を上げた。

抜群のプロポーションを見せつけた婀娜(あだ)な女を見やる。


ぶつかった視線の先には、焦茶の髪に白磁の美人――――ではなく、蒙古肌ののっぺらぼうな小童がいた。


真っ黒な瞳をにんまりと細め、先刻にも聞いた台詞を口にする。



「ユイ、3つ。」

幼児(クソガキ)
さっきのセックス・アピール美女をどこへやった?!

「カノン、貴方にはスニオン岬からす巻きで三日三晩干されて頂きましょう。


俺が幼女へ罵声を浴びせせると、間髪入れずに女神は俺へと満面の笑みを傾けた。



「……すま


き?


今、花の唇に似つかわしくない、とんでもなく過激な発言をされなかったか…?



「女神よ、す巻きなどと、どちらで覚えられておいでじゃ?」

シティ●ハンターという漫画です。
節操のない男性は100tのハンマーで打ち付けるか、す巻きにしてビルの屋上から吊るすと教わりました。」

「おお、懐かしゅうございますな。
確か、こんぺいとうなる鉛球も使用していたようですか…。」

「100tハンマーもこんぺいとうも出せないわけではありませんが、す巻きなら皆さんへの見せしめになりましょう。」


女神よ、それは間違った教本です。


某少年誌連載同時期ゆえに、タイトルを耳にすれば同期なりの笑みも生まれましょうが、それは断じて正解とは言えぬ懲罰にございます。




「…いつまでそうしているですか。」


女神は微笑みを称えたまま、俺の傍らに寄られた。 



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