星矢(Maine novel)

□First Ignition
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主の可憐な唇が紡ぐには余りにも相応しくない単語に、俺は絶句する。


幼女趣味…?

つまり女神はこの俺をロ…ロリコンだと、仰っておいでなのか?

鬼に畜生と書いて鬼畜と読む、愚劣共の一員だと仰って見えるのか?



「とんでもございません、女神!
このカノン、御身に誓って純熟した異性を好む健康男児でございます!」

「わたくしに誓って…?
よくもまぁ臆面もなく明言できるものですね…。恥を知りなさい!

!!


な、何故だ…。


何故こんなに女神はお怒りになられているのだ?

俺は何か、気が付かぬ内に女神の不興を被ってしまったのだろうか?!


い、いつだ?

一体、いつ…?!


考えても思い至らない。


何という不覚…!

主君最上。誠実かつ忠臣であれと心に決めているというのに!!



カノンよ。

「!」


主人の憤激の理由が見当もつかず、渋く顔を歪めた俺に、敬意と推尊の大先輩は目配せを寄越した。

トントンと御自身の胸を叩き、くいっと女を顎で指す。


………トントンと胸を叩いて女を指――――!!!



そうだ。


俺は公衆の面前で女の胸を堂々と揉みしだいている。

過程を知らぬ周囲には、不届きな輩にしか見えないのではないか?


まして、我が主は清純高潔たる処女神。

その晴眼には、愛と正義に相応しくない痴漢という名の悪鬼として映っておいでなのではなかろうか。



「カノン、貴方とて男性。女性に興味を持たれるのは当然でしょう。健康男児?大いに結構です。
けれど、歳幾年もいかない幼い少女に手を出すなど、言語道断、厭わしさの極み!

「ち、違います、女神!!
この女は幼女の姿に妖艶を隠した紛れもない成人女性でございます!」

!!


俺の言葉に女神が切れた。

音にして聞こえた訳ではないが、間違いなく女神の測ったようにバランスの良い広さの額がプツンと鳴った。


細い肩がわなわなと震えだす。


「言うに事欠いてそんな見え透いたを…!貴方の目は節穴ですか?!
よく御覧なさい、貴方の膝に座る少女を!貴方がその手で辱めている事実を!


?!


俺の手が辱めている?

膝の上の…少女?


そんなはずはない。

俺ははっきり見て、この手で感じたのだ。

膝の上の女が女児から成熟した美女に変化する瞬間を。

そして、張りがあってふくよかで、申し分ない美しい椀型の感覚を―――?!



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