星矢(Maine novel)

□First Ignition
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「それはそうだろう。女神の神業だからな。」

「あ、成程。つまり貴方は神から遣わされた救世主(メシア)ということですか?」

「いやいや、そんな大層なものではない。俺たちは女神の(セイン)―――?!


男は瞠目した。同時に吃驚する。


非常に自然に会話をしてしまっていた。

会話をしていてはおかしい内容で。


「!!」


男は会話の相手を振り返った。

いつの間にやら“彼女”は男のすぐ傍らに立っていた。


「こんにちは。」


女は男と目が合うと、柔和に微笑む。

綺麗な女だ。


瞬間、男の背筋がゾクリとする。

見覚えのある顔だ。

たった一週間前、この手でその額に触れた顔である。



「……あ、貴女は」

「やっと見つけました。
どうしても貴方にお礼が言いたくて、ずっと待ち伏せしていたんですよ。」

「………。」

「あの時、私たちを助けてくださった方ですよね?」

「………っ。」

「ふふ、違う!とは言わせませんよ。
その熊のように大きな体。そうそうお目にかかれませんから。」


間違えようがないと、女はウインクした。


「………っ!」


男は焦燥に駆られていた。


馬鹿な、こんな会話。


主の所業があり、ましてこの女性には自らが手を施した。

失敗したか?いいや、それこそ黄金たる己が考えにくい。



「だ、誰かと人違いをしているのではないか?
お、俺は貴女という女性を存じ上げぬ」

「あら、私をアマゾネスって仰ったのに?」

!!

「アマゾネスはちょっと酷いのではありません?
言われて嬉しい女性はあまりいらっしゃらないと思いますよ?」


アマゾネスとは、ギリシア神話に登場する女性だけで構成された戦闘集団の呼称だ。

卓越した馬術を持ち、故に騎馬による戦闘を最も得意とした。神話の中で度々登場し、その知名度はとても高い。



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