星矢(Maine novel)

□Stage METIS 1
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頬を恥じらいの赤に染め抜き、「さっきからっ!大人を揶揄うんじゃありません!」と、プリプリ怒っている。


「ははっ、ごめんよ。子供の戯事だと思って甘く見てよ。」


生きていれば立派な27歳の大人だけれど―――。


アイオロスは彼女の台詞にそう思いながら、明るく微笑んだ。






「はっ!」


アイオロスが僅かばかりの力を腕に入れると、静止していた扉は何事も無かったかのように動き出した。



ギイイィィィィ…



古びた蝶番と、戸と床の擦れる音が不気味に響く。

屋敷の中に蠢いていた空気が、久々の外気を欲するように一気に外へ飛び出してきた。

長期間、手入れがされていない証明である埃が渦を巻き、アイオロスと女性の視界を真っ白に遮った。



ゴホっゴホっ!…すっごい埃!もぅっ、アイオロスが締め切って出たりするから…っ!ロス、大丈夫?

「ゴホっ!うん、何と…ゴホっ…か」


涙目になりながら、アイオロスは返事をした。

埃が痛く目に沁みる。



「あ――いたっ。目に入ったかな?」

え?大丈夫?!


アイオロスの小さな吃驚を聞き逃さなかった女性が、彼の顔を覘き込んだ。

両手でそっと彼の顔を包み込む。

眼前の絶世の美女に、アイオロスの心臓に熱が滾る。



「ちょっ、待っ」

―――本当だわ。


女性の呟きは小鳥の囀りの様だ。

アイオロスは目線を少し彼女から反らし、目を閉じて言った。



「平気だよ。これ位、小宇宙で何とか」

あの子の聖闘士って、何かにつけて小宇宙で解決しようとするのよね。


女性が呆れ顔で愚痴を零す。

アイオロスは、確かにと、心の中で同調した。



ちょっと診せて?


彼女はアイオロスの目を右手で覆う。


少し冷たいかも知れないけど、我慢してね。


その声が聞こえるや否や、覆われた目に冷気が生じた。


我慢するほどでもない。気持ち良いくらいだ。

ひんやり、さわさわと、水タオルをあてた様な感覚だった。



数分の間そうしていると、女性はやんわりと手を下ろす。


どう?まだ痛いかしら?


アイオロスは目を開けた。 



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