星矢(Maine novel)

□Stage METIS 1
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ええ、言ったわ。
あの時に言った風の主と、浮島(アイオリア)に居を構えていた風の主は同一人物よ。つまり―――



女性はアイオロスを指差した。

強い意志を込めた瞳をアイオロスに向ける。



貴方を加護した人。

「私を……。」


アイオロスは両手を胸の前に広げ、自分自身を確認するかのように見下ろす。


「生まれかわり…なのだろうか?」


浮かんだ疑問を、女性に投げかける。

投げかけられた女性は目を閉じると、静かに首を横に振った。



いいえ。アイオロスは…風の主は、ある方の寵愛を受けていたから。死してなお、転生をせずにあの方と供にいるわ。
―――アイオロス、貴方に加護を与えたのは、私との約束を果たすため。


「約束?」

そう、古い古い時の彼方の約束。


女性はそこまで言い、ふわりと笑んで口を閉ざす。



これ以上、語る気はない―――。



そう笑顔が訴えていた。


話の先が気になりつつも、アイオロスは口を噤む。

畳み掛けて聞いたところで、彼女が覆って口を割る事は無いだろう。


代わりに一つだけ、と口を開く。


「その、風の――私を加護してくれた人も、アイオロスなのだろう?」

そうよ。
友人で風の主アイオロス。至高の寵愛を受けし風の王。


「私は?」

ふふ、女神の聖闘士。あの子を守ってくれた英雄アイオロス!


女性は嬉しそうな微笑を零した。

素敵な笑顔だ。


ずっと見ていたくなる。



「ややこしくないかい?」

え、そう?

「うん。絶対混乱するよ。」

そうかしら?

「間違いなく。」

………。

「………。」


暫しの押し問答の末、敗北を察した女性が口を開いた。


分ったわ。何て呼べばいいの?アイオロス。


言い切ると唇を真一文字に結び、手を腰に据え、偉そうに背を踏ん反り返す。


私にとっては二人ともアイオロスで、呼び方なんて変えたくないんだけど…。 



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