星矢(Maine novel)
□Stage METIS 1
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「ええ、言ったわ。
あの時に言った風の主と、浮島に居を構えていた風の主は同一人物よ。つまり―――」
女性はアイオロスを指差した。
強い意志を込めた瞳をアイオロスに向ける。
「貴方を加護した人。」
「私を……。」
アイオロスは両手を胸の前に広げ、自分自身を確認するかのように見下ろす。
「生まれかわり…なのだろうか?」
浮かんだ疑問を、女性に投げかける。
投げかけられた女性は目を閉じると、静かに首を横に振った。
「いいえ。アイオロスは…風の主は、ある方の寵愛を受けていたから。死してなお、転生をせずにあの方と供にいるわ。
―――アイオロス、貴方に加護を与えたのは、私との約束を果たすため。」
「約束?」
「そう、古い古い時の彼方の約束。」
女性はそこまで言い、ふわりと笑んで口を閉ざす。
これ以上、語る気はない―――。
そう笑顔が訴えていた。
話の先が気になりつつも、アイオロスは口を噤む。
畳み掛けて聞いたところで、彼女が覆って口を割る事は無いだろう。
代わりに一つだけ、と口を開く。
「その、風の――私を加護してくれた人も、アイオロスなのだろう?」
「そうよ。
友人で風の主アイオロス。至高の寵愛を受けし風の王。」
「私は?」
「ふふ、女神の聖闘士。あの子を守ってくれた英雄アイオロス!」
女性は嬉しそうな微笑を零した。
素敵な笑顔だ。
ずっと見ていたくなる。
「ややこしくないかい?」
「え、そう?」
「うん。絶対混乱するよ。」
「そうかしら?」
「間違いなく。」
「………。」
「………。」
暫しの押し問答の末、敗北を察した女性が口を開いた。
「分ったわ。何て呼べばいいの?アイオロス。」
言い切ると唇を真一文字に結び、手を腰に据え、偉そうに背を踏ん反り返す。
「私にとっては二人ともアイオロスで、呼び方なんて変えたくないんだけど…。」