Side Story

□過去の拍手たち
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そう思って、私はあの方の神殿を訪ねた。



「!! 貴女は!!」


驚愕の表情で私を迎えてくれたのは、あの方の側近の一人の女性だった。

側近と言っても、あの方の一族ではない。

彼女の事は良く知っているわ。


古くからの馴染み―――と言うか、実を言うと私の姪よ。


あの大戦にも、彼女のお母様―――私の妹であり、3000人の姉妹の中で最も畏いと言われる彼女の指示もあって、参戦してくれた。

そして、多くの勝利を私たちに齎してくれたわ。


そんな懐かしい顔に、私は満面の笑みを向けた。



「お久しぶりね。」

「お、お久しぶりっていうか…貴女、ここへ来ても大丈夫なの?
この神殿…いいえ、世界は今、貴女の噂で持ちきりよ?」


彼女は酷く狼狽した様子で、私に寄りかかる。

結婚式での一件以来、私とあの方はすっかり噂となってしまっていた。


そりゃぁね…あんな公の場であんな事してくれたらね。

噂にもなるってものだわ。



「ふふ、そうみたいね。
だから―――ね、その決着を付けに訪ねてきたのよ。」

「け、決着って」

「決着は決着でも、勝ち負けではない決着だから、貴女の力を借りる事はできないけれど。」


私は自嘲気味に微笑んだ。

彼女には勝利を呼び込む力がある。

この想いに勝敗があるのなら、膝をついて彼女に縋りたいくらいだわ。


誤魔化すような私の笑みを、彼女は不安気に覗き込んだ。



「まさか、付き合うの?」

「うふ。」

「付き合わないわよね?」

「うふふ。」

「笑って濁さないで!あの方は私たちの王なのよ?その辺の適当な男ではないのよ?
それに……貴女、自分の状況を分っているの?!」

「ええ、分っているわ。」

「分っていないわ!
いくら愛されているからと言って…愛では乗り切れない耐えられない困難だって起こるかもしれないのに…!」

「そうねぇ、その時は私に味方してくれる?
あの方と喧嘩したら、私一人では勝てる気がしないわ。」

「痴話喧嘩は困難とは呼ばないわ!」


けたたましく、今にも襲いかからん勢いで、彼女は私を睨み付けた。


「もっと本気で答えて!私が言っている困難は…、困難は…!」



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