Side Story

□過去の拍手たち
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『追憶1:きっかけ』



どうしてこんなことになったのかしら?

ただ可哀そうだったら、助けてあげただけなのに。


貴方が可哀そうだったんじゃないわ。
彼女が気の毒だったのよ。



残酷な彼女の夫。

子に怯え、因果応報に苦しめられた、私たちの王。

彼が、彼女との間に生まれた子に犯した罪を思うと…。

私も女性だから…彼女の気持ちを考えたら。

…助けてあげたいって思ったの。



だから、貴方が頼んできたからとか、そんな事は関係ないわ。

忘れてないかしら?

私は天下の神族。

貴方の願いを聞き入れる必要なんてなかったの。

このままでも、十分に幸せに暮らせていけたのだから。




でも、そうね。

信じて疑わず、意志を貫き通すその瞳に…少しほだされたのかもしれないわ。

お兄さんとお姉さんを案じる熱意に、惹かれたのだって認める。

逞しくて、勇ましくて、賢くて、調和が取れていて。

全てを統べる者に相応しい方だって事も、すぐに分ったわ。

貴方の全身から湧き上がる閃光の煌めきに、時代が変わる時が来たんだ、って思ったの。





薬を作ったことなんて、それ位が理由よ。

策を講じた事だって……、さっきも言ったでしょ?彼女が気の毒だったからよ。




一族を捨て、10年のも戦いの中、貴方に助力を差し出したのだって、新しい世界を望んだからだわ。




それがどうしてこうなるの。

どうして貴方に求められる結果に繋がってしまうの。





勘違いしないで。

貴方を好きになったわけじゃないの。






お願い。

そんな目で見つめないで。

逸らせられなくなるわ。




腕を伸ばさないで。

抱こうとしないで。

捕まったら最後、きっと流されてしまうわ。




その口を開かないで。

甘く切ない言葉を紡がないで。

とろけて、酔って………。


重ねてしまいたくなるから。







〜追憶1:きっかけ 終〜

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