Side Story

□過去の拍手たち
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『プレゼント』







コンコン。


窓を突く音がして、私はそちらを見た。

窓枠には猛々しい訪問者がとまっている。


鷹よ。


鷹って、鳥でしょう?

訪問“者”じゃないって、叩かれてしまいそうだけど。

いいのよ、“者”で。



嘴に手紙を咥えていた。

…粋な事をするのね。


手紙を私が受け取ると、鷹はふわりと翼を広げて舞い上がる。


「あぁ、待って。」


飛び去ろうと勇む鷹を静止して、私は鷹の頭を優しく撫でた。

どうせ“返事が無い”って、怒るんでしょうから。

こうして歓迎したわよって、伝えてやってね。


くるくると鷹を愛でた後、窓から腕を伸ばして空へ放つ。

気を付けて、無事に帰ってね。



さて…。

何の手紙かしら?

私は鷹を見えなくなるまで見送った後、手元に残された手紙を見やった。


あら、あの方の封緘。

どういう風の吹き回し?

公然と求婚しておいて、文通でも始めようって言うの?

う〜ん…面倒臭い。



手をかざしてそれを開ければ、手紙の内容は私の頭の中に響いて轟いた。


………。

………。

………。

………え?

プレゼント?

は?

でも、この内容って…。



どうやら私に贈り物をする気らしいわ。

そう言えば、2番目のお姉様が見えた時、そんな事を言っていたわね。

プレゼントを探しているだの、かんだの。


……――そう。

答えが出たの。

でも、これって…。



手紙の内容が良く理解できない。


“贈り物をしたいから、指定した場所に来い。”


こんな感じの簡潔な内容。


………。

移動しなくちゃいけない贈り物って何よ?

私は息を付いて、肩を竦めた。










「アイオロス!」


あの方が指定した場所には、大好きな風の王の姿。

あ、もしかして、贈り物って彼の事?


「やあ、久しぶりだね!
残念だけど、私は貴女への贈り物じゃないよ。」


―――ですよね。

私が唇と尖らせると、アイオロスは「あはは!」と、爽やかに微笑んだ。

私の頭にポンポンと手を置く。



「私はお方様の代理だよ。
貴女の案内するために来たんだ。」

「案内?」

「ああそうだよ。
本当はお方様、自分が行くって言って聞かなかったけどね。何せお忙しいから難しくて。」



そりゃあ、ね。

お忙しいでしょうよ。

何せ、私たちの王なんだから。



「―――此処だよ。」


アイオロスが視線で私を促した。

私はそれに沿って、促された方向を見る。


建物ね。

結構大きいわ。


「ここで子供たちに知恵と知識を授けてほしいんだ。」

「!」


え?

知恵を、知識を……授ける?


「お方様はね、先々の未来のために、貴女の様に賢い者を育てたいらしい。」


つまり、先生って事?




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