Dream
□まだ、
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まだ、
周防尊が命を絶ってから3週間が経とうとしていた。
夜の静かなバーカウンターで、草薙は一人煙草を口に加え、先を指で弾いた。
炎が燈ることはなかった。
「ハッ....」
草薙は苦笑した。
周防が死んですぐ草薙は吹舞羅の解散を命じた。最初こそは反対するものもいたが、草薙の有無を言わせぬ態度に反論を言うものは次第にいなくなった。その後草薙はクランズマン一人一人に新しい道を与えた。草薙の口利きで仕事に就くもの、学業に専念するもの。先日の出来事から立ち直れてはいないものもいるが、それなりに正しい道を進んでいる。
だが、自分はまだ、周防尊という人間の赤から離れることができていなかった。一人一人に道を与え励ましたものの、一番新しい道を求めていたのは、
ほかでもない草薙出雲自身だった。
「ほんま、情けな...」
誰もいないバーにぽつりと呟いた自分の声が妙に響く。
アンナは草薙の後処理が終わるまで鎌本の家に泊まらせてもらっている。
いつもなら二階にいるはずのものは、誰一人として、いない。
十束が置いて行ったバーにそぐわない数々のものを見て草薙はまたぽつりと言った。
「俺まで置いてきよって...」
いっそのこと連れて行ってくれれば楽だったのに