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□発音は大事
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謙也さんが英語の発音すごい上手だったら。






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「光ー!トリックオアトリートやでぇ!」
部活終わり。
何や知らんけど謙也さんがめっちゃかわええ笑顔で手ぇ差し出しながらそんなことを俺に言ってきよった。
いや言われたことは頭に入ってんねんけどそんなことより謙也さんめっちゃかわええ。
「聞いとんのか光!今日はハロウィンやで」
あぁそうか。今日は10月31日なんや。ハロウィンか。
ハロウィン?
甘味好きの俺にはたまらんイベントやんか。たまらん甘味やな!どっかの副部長みたいになってもた。
俺が黙って考えをめぐらせていれば、謙也さんは、なぁーお菓子ーとかなんとか言っとる。
そんなことをしていると、急にバンッと部室のドアが開いた。
「トリック・オア・トリートや謙也ぁ!お菓子はいらんからイタズラさせてぇな!」
「あ、白石!白石が絶対変態になると思てアメちゃん持ってんねんで!」
ほら、と言って謙也さんは部長にもっていたアメちゃんをいくつかあげた。
「なーんや残念やなぁ。せやけど謙也からお菓子もらえるってめっちゃエクスタシーやで!」
「うっさいっすわ部長。謙也さんに変なことしないでください。」
部長にイタズラさせてたまるかっちゅー話や。イタズラしてええのは俺だけや。
そのうちに謙也さんは、あ、そうや!と言って部長の方に向き直った。
「白石、トリックオアトリート!」
「んー謙也、お前英語もっと出来るやろー。正しい発音は?」
「しゃーないなぁー。Trick or treat?」
「やるやん。ほら、謙也のために買ったクッキーやで!」
「白石おおきに!めっちゃうまそうや…!」
はー謙也さんやっぱ英語の発音ええなぁ。
まぁそんなんは置いといて、謙也さん部長に餌付けされとるん気づいてるんやろか。
謙也さんはさっき部長にもらったクッキーの箱を開けとる。あー、そうや。俺まだ謙也さんにお菓子もらっとらん。
「謙也さん、トリック・オア・トリートっすわ。」
「光も意外とのる気やん。白石にもらったクッキー一緒に食べる?」
「ちゃうねん。謙也さんのお菓子。」
「あ、アメちゃんならまだあるで!」
あーアメちゃんまだ残っとったか。アメちゃん全部部長に食われてまえばよかったんに。空気読めんなアメちゃん。まぁしゃぁない。謙也さんからお菓子もらえるんやからええか。
「じゃあアメちゃんください。」
「えーただあげるんじゃつまらんから、めっちゃ正しい発音でトリックオアトリート言えたらな!」
「え…」
いやいやいや。俺天才やけど英語の発音までは天才やないねんて。そんな謙也さんみたいなキレイな発音できひんって。無理やねんって。
「言えんのか光ー?」
そういって謙也さんはニヤニヤし始める。うっさいねんこれくらい俺にだって出来るっちゅーねん。天才やねんぞ。
「ト、トリック・オア・トリート…?」
「いまいちやなー光!もう一回!」
「ちょ、謙也さん、それ自分のさじ加減ちゃう!?ずるいっすわ!」
部長もぶくくと笑っとる。めっちゃむかつく。なんやねん…

結局、謙也さんと部長のさじ加減でめっちゃ遊ばれることになるのはあと数秒先の話や。

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