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□darlin'
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「サンジくんて、かっこよすぎてムカつくわ」
ポツリ、とその形の良い唇から飛び出た言葉に、巻き眉のコックはすぐさま反応した。
サンジはナミの言葉を、いつも聞き逃さない。彼女のカップへと紅茶を注ごうとするポットの傾きが止まった。
「え?な、ナミさん、それってどういう…?」
大好きな大好きな彼女の機嫌を損ねたのかと、サンジは慌てて理由を訪ねる。

「だって何だか、私がサンジくんのこと、顔で選んだみたいじゃない」
つん、と綺麗な横顔で頬をピンクに染めて教えてくれた理由は、彼女らしいと言えば彼女らしい、なんとも負けず嫌いな理由だった。が…

「えっ、ナミさん違うの!?」
顔で選んでくれたんじゃないの!?ポットをテーブルに置きながらも(ちゃんと忘れずティーコゼを被せているあたりさすがプロだ)聞き返す心底まぬけなコックはそう信じて疑っていなかったので、驚きを隠せない。

「バカ!違うわよ!!他にも色々あるに決まってんでしょう!?」
「い、色々って?」
「色々よ!!優しいとことか、料理が上手なところとか、私のこといつもちゃんと見ててくれるところとか……あ。」
つい頭に血がのぼって捲し立てた。言わなくていいことを。…しまった。
気付いたときには目の前のにぶちんコックは静かにこちらを見ていて、居づらいことったらない。

「…ナミさん」
「…何よ」
「ナミさん」
「だから何よ」
気まずくて目を合わせられない。
「俺も、ナミさんのこと色々、全部好き」

すごく優しい眼差しがまっすぐにこちらに向けられていた。綺麗なブルーの瞳とか、穏やかな低い声も、そういう素直で気持ちを隠さないところとか…ああもう!
そういうのも、大好きで困る。
ほんと困る。

本当はいつも、こうやって彼に勝てないのがムカつくのだ。
「どうぞ、ナミさん」
あらためて注がれた温かいオレンジペコの香りに包まれて、カップに目を逸らしながら小さく呟くのが精一杯だった。

「…ばか」





fin

拍手お礼短文。サンナミはナミちゃんのほうがバタバタするのがかわいい。

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