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□やさしいことば
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ゾロが好きだと言ったら、「俺もだ」と返ってきた。
思いがけない言葉にびっくりして顔を見たら、ゾロは笑って「俺も、ルフィが好きだ」ともう一度言われた。
ゾロの笑った顔はとてもとても優しくて、今までに見たことのない種類の笑顔で、こんな笑い方もするんだとルフィは思った。
自分の思いを伝えられればそれで良かった。
自分がどんなことを言っても、この男はいつもすべて受け止めてくれるから。
この気持ちだけ、ゾロの内に納めてくれさえすれば満足するつもりで、ゾロからのアクションは求めるつもりではなかったのだ。…それなのに。
「…びっくりした」ぽつりと呟けば、ゾロの顔はさっきの笑みから苦笑に変わる。「なんだ、知らなかったのか」感心するような声音で言われた。
「うん。知らんかった」正直に頷いたら、ハハッと、ゾロは声を出して笑う。またゾロの笑い方が変わった。
今日はゾロ、よく笑うなあ。あ、おれが笑わせてんのか。
「ゾロとおれ、一緒だったんだな」感心して言えば、そうだな、と相槌。それから「お前と一緒で、嬉しい」と大好きな低い声で続けるもんだから、ルフィは非常に困った。
滅多に自分の気持ちを漏らさないゾロが、今日はあっさりルフィに心の内を明け渡してくれるもんだから。
だから急に、ゾロのことが愛しい気持ちが込み上げてきて、そんなのはルフィにとって初めてのことだったから、戸惑ってしまった。
うわ。
何だ、これ。頬が熱くなってきた。息も苦しいし、心臓もすごくドキドキする。
好きだ。好きだ。大好きだ。
胸の中の嵐に、ルフィはもまれた。ルフィは俯いた。頭がくらくらする。目の奥がちかちかする。「…ゾロ、」声が掠れていた。「うん?」静かに促される。
「ゾロんこと、もっと好きになった」もう一度伝えたら、「俺もだ」そんな返事が返ってきた。優しい声だった。
end.
20120624
恋が愛に変わる瞬間。