■text-p

□『すきにして、いいよ』
1ページ/1ページ

―――お前な。

いつもよりずっと重低な声音に縛られる。殺気さえ感じられそうな眼差し。手首を掴まれ背後の壁に縫いとめられた。
軽い拘束のせいでぐっと近くなった距離。目の前のこの男から漂う香りを強く吸う。普段あわく香るそれはいつもよりきつくアンに届き、嗅ぎなれぬ強い香りに頭の奥が痺れくらくらした。

「あんまり大人を軽く見てんじゃねえぞ」

この人のこんな声を聞いたのは初めてじゃなかった。あたしはよくこの人に叱られることばかりしでかす子供だったから。

けれどいま何故彼がこんな低音の警告を示すのかは、今までの悪ふざけなんかとは全然違う理由からだというのはわかってる。
だってこうなってほしくて、とうとう口にした言葉だったんだから。
こんな体勢とは裏腹に、今あたしはこの人を追い詰めている。

「からかってなんかないよ」

だってマルコの方だっていつも逃げてばかりいるから。先に仕掛けたのはあんたの方だっていうのに。
いい加減、はぐらかさないでほしい。

「…ポートガス」

大人だとか子供だとか。
教師だとか生徒だとか。
そういう互いの対極の部分ばかり並べて距離をとって警戒してるから、あたしだって本音を冗談に隠してあんたにぶつけるしかなかったんだ。…今までは。

「名前。呼んでよ」

マルコとあたしは男と女だ。
この対極でいる限り、どうにかならない確率だってゼロではなくて。
現にマルコは子供で生徒のあたしを女として意識してきて、
あたしだって大人で教師のマルコを男として欲しいって思ったんだ。だから言ったんだ。もうふざけたりしない。
あんたにとってほんのからかいの意味を持つそれだったのかもしれないけれど、あの時からあたしの中でマルコに向ける気持ちに名前がついたんだ。
子供だからって、バカにしないで。

あんたが最初にあたしの唇を奪っていった時のように、あたしはあんたの心を奪ってやる。
そのために先程口にしたばかりのその言葉を、もう一度唇にのせた。マルコ先生の目を見返す。大好きな、綺麗な青。これをあたしのものにする。
かわさないで。はぐらかさないで。あたしと向き合ってよ。…それから。

「あたしをすきにして、いいよ。マルコ」





end.

教師×生徒。年の差カップルなら一度はやってみたい学パロ。強気で攻めの勢いのアンちゃんが大好きです。若さってこわいね!それが女子ならなおさらね!
いっそアン×マルコと言い切りたいこのごろ。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ