異世界記録 閲覧注意書架

□約束
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戦地で、俺は駆けている。

まるで、影のように、音もなく。

それは、雇い主との契約だから。



でも。



でも、今の雇い主。旦那は違う。旦那だから、俺は仕事をするのだ。

旦那を守るため。
旦那を助けるため。

旦那は優しすぎるから。
俺が守ってあげなくちゃいけないのに…

そのはずなのに…!

全身に走る激痛。
腹が、首が、喉が、腕が…至る所が切られていた。

その時見たのは、黒い影だけ。
鴉の羽と黒い影だけ。


(ごめんね、旦那。)

俺を抱き上げて、涙でグシャグシャになった顔で俺の顔を覗き込んでくる旦那。

そんな旦那に、ごめんねって言いたいのに、喉を裂かれたせいで、それすらも言えない。


「佐助!死ぬな!お前は忍び隊の長なのだろう…!?俺を守ってくれるのだろう…!?」


まだ、旦那が小さい時に交わした約束。

旦那を守りぬくこと。

(ごめんね、ごめんね…旦那。)

頑張って口を動かしても、出てくるのは血と掠れた息だけ。

(もっと、旦那の助けになりたかった)

「佐助ぇ!」


俺は、旦那の鉢巻きがたなびいているのが好きだった。

後ろ姿が好きだった。
頼もしい主だと思ったんだ。

大将がいなくなってからは、もっと…

(ごめんね…)

「佐助ぇ…」

(旦那、ありがとう)

「っ…佐助ぇぇぇえええ!!!!」


泣かないでよ、旦那。
俺は、いつでもアンタの隣にいるから。

来世では、迎えに行くから…
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