Short novel

□素直に!
1ページ/1ページ






「おい、実佑」




『…』




「…おい。」




『…なに。』




「何シカトしてんだよ」




『別に。』







昴にこれほどかというくらい冷たく当たる私




……大好きなのに




こんなにも腹の底からイライラがあふれ出てくる




でも、こうやって私を怒らせてるのは昴なんだよ!







『…』




「何だ…?言ってみろ」




『…いや。』







機嫌を取ろうという気なのか、後ろから腕を回し抱きしめてきた昴




まぁ、嬉しいけど




…理由を言えなんて言ったって、言ってやるもんか!




絶対絶対、言ってあげない。




でも、そうとまで意地を張る私がいるのは




裏を返せば、その私を怒らせる理由は到底言える内容ではない、ということ




その内容…ただ、




ただ昴が、私じゃない女の人に話しかけて、何を話したのかはしらないけど笑ってた




……それだけ。




もし昴にこの内容を告げたらどうなるのだろうか




というか、恥ずかしくて言えない




だって、大好きな人の些細なことでこれだけ怒れちゃうのは…いわゆる




"嫉妬"ってやつなわけだから




嫉妬しました、なんてやっぱり言えないよ…




すっごく嫌だったけど、やっぱりこの怒りの理由だけは言えない。




それにね、昴のことでこれだけ嫉妬してる自分がいることを認めたくないの。




なんだか悔しいし…自分じゃないみたいなんだ。




私から好きとか、そんな事さえあんまり言わないから




だから、好きだなんて絶対に言えない…




でもこの怒りの大きさはきっと、私のあなたに対する愛しさ、そのものなんだよね




じゃなきゃこんなに嫉妬しないかって、認めちゃってる私がいる




大好きだからこそ嫉妬して、怒って




そして、もっとあなたが大切になる。




何よりも大切で大好きでずっとそばにいてほしいからお腹の底から怒れるのかも







「…素直じゃねぇな」




『…だって、昴が…』




「俺が、?」




『…女の人に、笑顔向けるから…。』




「…ククッ」




『笑わないでよバカ!』




「はいはい…よく言えました。」




『っ…』







いきなり耳元でそう囁かれた私は、顔を赤くして俯くしかなかった




私の異常なほどの嫉妬を愛情として受け止めてくれる貴方は、わたしのかけがえのない存在




素直じゃなくてすぐに嫉妬しちゃう、そんな可愛くない私でごめんね




だけどね、それはあなたが大切すぎるからってのことなの




それをわかってくれてありがとう







「…たまには素直な実佑もいいな。」




『…ごめんね。』




「可愛いな…見てて飽きねぇ」




『…』




「…愛してる。そんなお前を全部、な。」




『…わたし、も…』




「も?…続きは?」







得意げにSな笑みを浮かべてそう聞きかえしてくる







『…す、き!』







私って単純。




そう言ったあとに、優しく昴にキスされたら




さっきの怒りなんてどっか行っちゃった




たまには素直になるのもいいのかもしれない









.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ