Short novel

□忘れないで
1ページ/1ページ






『も、もう飲めないです…』







実佑の友達から電話がかかってきたと思ったらこれだ…




居酒屋で飲み過ぎた実佑を掴まえ、飲み会に終止符が打たれた







『…ん……?…すば…る、さん』







実佑は少しだけ意識が戻ったが今にも眠りそうだ







「はいはい、もういいから。俺の家行くぞ」







真っ赤な顔で、友達に次は負けませんと言った実佑を半ば強引に駐車場まで連れて行った











『ちょっ………!?』







家に着き、実佑を横抱きにすると流石に落ちるのは怖いんだろう、大人しくなり俺の首に手を回してくる




そのままちゃんと掴まってるように声をかけ、なるべく揺らさないようにしながら部屋まで移動する




実佑は目を瞑り、眉根を寄せている







「大丈夫かよ…気持ち悪いか?」




『気持ち悪くはない、けど…ちょっとくるしー…』




「ったく、なんであんなになるまで飲むんだよ……全く…」




『だって、お酒おいしいし…料理も美味しかったから…つい…』







部屋について実佑をベッドに横たえる




暖房を切ってあったせいで、部屋の空気はひんやりと冷えていた




暖房と部屋の電気を点け、俺もベッドに腰かける







「寒くないか?」




『大丈夫…ひんやりしていて気持ちいい…』







スカートを穿いているというのに全くお構い無しにベッドに横になる実佑




冷たいシーツに埋もれる頭をゆっくり撫でると、その手に頬を擦り寄せてくる




猫みてぇだな




可愛くて、気ままで、俺を振り回す猫。




なんか少しだけ悔しくなって、眠りに落ちそうな実佑に声をかける







「実佑」




『…なーに…』







既に眠りの世界に片足を突っ込んでいるのだろう、間延びした返事




寝かせまいと続けざまに問いを投げる







「なぁ、ちゃんと反省してんのかよ?」




『反省…してるしてる…』




「何に?」




『んー…食べすぎたことと、飲み過ぎたこと…かな…』




「それだけか?」







そう問えば、目は瞑ったまま他に何かあったっけという顔







「俺をほおっておいたこと…ちゃんと反省しろよ」




『す、…んっ』







横になったままの実佑の唇を少し強く奪って




吐息さえも洩らさぬように深く深く口付けたら、お酒の味がした。







「苦しいなら服脱がせるか…?」




『遠慮シマス……』




「遠慮すんなよ」







実佑に振り回されるのは嫌いじゃない。けど、振り回されっぱなしは俺には性に合わねぇんだよ。









.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ