Short novel

□言葉に出せたなら…
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だって、言ってくれないと不安になるから…







『ねぇ、何で昴は私と付き合ってるの?』




「今さら言う事でもねぇだろ」




『でも、ちょっと気になったの』




「じゃあ気にするのをやめろ」







ただ聞きたい言葉が1つあるってだけなのに、これほどまでに苦労する




最後に聞いたのはいつだっけ?




時が流れて忘れてしまわないように大切にしまっておくには、不安が積もりすぎる







『昴、私の事好き?』




「あぁ」




『どれくらい?』




「さぁな」




『……わからず屋っ…』




「俺にはお前がそんなくだらねぇ質問をする事自体よっぽどわかんねぇけどな」







口に出さないのはいじわるなのか




それとも……それほど私の事を想ってくれていないのか




昴は気づいてないのかな




パーフェクトとも言えるその存在とか、誰もが視線を向けるそのオーラとか




普通って言葉がお似合いの私とつり合ってない事とか




そんな事私は初めから気づいてた




昴がどうして私を選んだのか




昴がどうして私の事を好きなのか




言葉に出してくれないと、私だって不安に潰されそうになる




いつもはこんな事要求しない




昴に迷惑がかかるような事をしたくないってずっと思ってきたから




だからただ自分の想いだけを貫いてきた







『……やっぱり言ってくれないんだね』







でも、この不安はずっと消えてくれない







『昴の気持ちがわかんないよ……』




「あ……?」




『昴の事…大好きだけど…』







私ばっかり昴の事が好きで、昴の好きなんて私に比べたらちっぽけかもしれない




最初は……それでもいい。って思えたのに




こんな私だから…たくさん好きになってもらえないのかもしれない







『もう不安ばっかりだよ……』







昴がはぁっと溜息を付きながらベッドに腰を下ろす




めんどくさいって思ったのかな




疲れるって思ったのかな




私なんかいらないって思ったのかな……




時間が経つごとに嫌な方向へしか思考が回らない




「来い」







突然、昴が私を導くように手招きした







『……え?』




「いいから、…来いよ。」







さらに力強く言われ、私は戸惑いながら昴へと歩み寄る







「そこじゃなくて」







隣にいる私の体をぐぃっと引き寄せると一瞬軽くなった体は昴の長い足の間へと移動されていた




昴の存在が後ろに感じる体勢になり私の戸惑いは大きくなる




その瞬間私の体をふわっと包みこむように抱きしめられた




暖かい感触が一気に体を駆け巡る







「くだらねぇ事ばっか考えやがって」




『くだらないって』




「悪ぃ…」







思わず目を見開いてしまった




昴のそんな言葉、予想できるはずがなかったから







『すば、る…?』




「あー……俺はそういうの苦手なんだよ」




『でも…そらさんは昴は色んな女に好きとか言ってたって……』




「…あいつの言う事は真に受けんな」




『は、はい…っ』







昴の声が突き刺さるような声に変わって、思わず力んで返事をしてしまった




でもだって、昴がそういうの言うのが苦手ってそんな話、誰が信じるの?




いつだって誰よりも自尊心にあふれてて大人びていてカッコよくて




そんな昴しか……知らないもの







「苦手なのはお前が特別だからだ…」




『…特別って』







ぎゅって腕に力が込められて、体が痛いくらい抱きしめられる







「……ちゃんと聞いとけよ」




































「愛してる」









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