Short novel

□ハッピーバースデー
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いい子のお前に、一番のプレゼントを










「ほらよ…。」







『…こ、これ、やっぱり昴が作ったの?』








「当然だろ?誰に向かって言ってんだよ…」











あたしの目の前に運ばれてきたのは、昴お手製の誕生日ケーキ








完成度が高いのは毎度のことだけど…やっぱり凄すぎて








まるで職人が作ったと言っても過言ではない完成度に、あたしは目を丸くするしかない








当の本人は、満足げな顔をして見ているけれど











『…昴って本当に何でも出来るよね』








「まぁ、俺にかかれば出来ないことなんて無いからな」











爽やかに笑う昴に、曖昧に笑い返す








実力が伴っての台詞だからこそ、私は何も言えないけど








もう少し謙遜とか出来ないものか








なんて、怖いから絶対言わないけど











『美味しい…!』











ケーキの美味しさに思わず口元が緩む








ケーキの前に出された料理といい、高そうなシャンパンといい








いつものように至れり尽くせり過ぎて、逆に不安になったりして








昴があまりSを見せない時は、何かきっと裏があるってこれまでの経験で学んでいるからだ








優しさをただで分け与えるような人じゃないんだ、昴は








自分の彼氏にこんなこと言うのもどうかと思うけど











『…あの、昴?』








「何だ?」








『何か今日、優しく、ない?』








「その言い方だと、俺がいつも優しくないみてぇだな?」











フッと笑いながら、昴の綺麗な指が私の頬を撫でる








少し冷えた指先が気持ち良かったから








あたしは目を閉じて、昴の手の上に自分の手を重ねた











「…相変わらず、お前は無防備だな」








『昴の前だからだよ』








「俺が一番警戒しないといけない相手かもしれないけどな」








『…やっぱり何か企んでるんだ』











あたしがじっと昴を睨むと、昴は口元をほんの少し上げて笑った








しまった、多分喜ばせた








そんなことを思った時には既に唇が重なっていて








『…ッ、』








昴の舌が、ゆっくり上顎をなぞるから








自分の意思とは裏腹に、びくりと大袈裟に身体が震えてしまう








角度を変えながら、何度も唇を甘噛みされて








あっという間に、思考がふやけていく








「…クリーム、甘過ぎたか?」








楽しそうに笑いながら、あたしの唇を昴の指が滑っていく








私はもう、まともに考えることなんて出来るはずもなく








昴の行動をただただ見つめるしかない











「いつも実佑のこといじめてばっかだから、今日くらいは甘やかしてやろうと思って」








『いじめてる自覚はあったんだね…』





「俺なりの愛情表現に決まってんだろ?」











そう言いながら、後ろから抱き締められる








頬に何度もキスをされて








優しい腕の中で、普段のこと忘れてしまいそうになるなんて





きっと昴の思う壺なんだろうな











それでも良いと思うのは、惚れた弱味だから仕方ない










『優しいのは今日だけなの?』








「さぁな。俺は実佑の泣き顔も好きだからな…」








『………』








「でも、笑った顔のほうがもっと好きだ」








『…そういうとこ、ずるいよ昴は』






























ハッピーバースデー!




(やっぱり鳴かせてもいいか?)









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