過去からの贈り物。
□ALIEN
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ALIEN
耳鳴りがする。頭の中で鐘ががんがんと鳴り響く。
君と手を繋いで、螺旋階段を昇ってた。
長くて、辛い。歩くのは、こんなにも、辛い。けれど、進まないわけにはいかない。足は、もう擦り切れて真っ赤になっていた。
静か過ぎてうるさい空気を震わせて、早い息遣いが風の中に混じる。
頂上からは、白い砂交じりの竜巻が落ちてくる。
止まって君を庇うことも、穏やかな空へと逃げ出すこともできなかった。
君だけが綺麗だと言ってくれた、背中の翅は、破れている。
空には、遠く霞んだ楽園が蜃気楼みたいだった。
「翅があれば、飛んでいけるのに。
もうすぐ僕の翅は竜の翼になって、君を連れて行けるのに」
まだ翅は治らないから、歩いて少しでも進んでいなきゃならない。
君には翅がないから、楽園へと飛んで行くことはできない。
だから、約束した。
「竜の翼を手に入れたら、君を背中に乗せて楽園まで一緒に行くんだよ」
君はいつも曖昧に笑う。きれいな肌には、たくさんの赤い傷がある。
「約束だよ。僕は、君がとても好きだからね」
君はまた曖昧に笑った。
「あたしも、あなたのことは、とてもとても好きだよ。
だけどねぇ、あたしのことは、あんまり信用しちゃあいけないよ」
「どうしてそんなこと言うの」
「あなたとあたしは違うから」
「そんなこと関係ない。僕は、君を連れていくよ。信じてよ」
君はやっぱり曖昧に笑った。
風が強くて、君が霞んだ。
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