ウル織SS

□約束
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何故、人は馬鹿な夢を見て
馬鹿な空想をして
思いを募らせるのだろう。



約束




「ねえ。ウルキオラさん!いつか海を見に行きましょう!」

「海?」

女が可笑しな事を言うものだから俺は戸惑った。
何を言い出すんだ。
こんなに嘘も無い笑顔で。
眩しいものが、笑顔が、感情が嫌いだった。
だが俺は最近この女の顔が好きになってきた。心の底から笑う顔が。
どんなに絶望的な状況に居ても。

「そうです。ウェコムンドには砂漠の海しかないでしょう?現世の海は青くてどこまでも深いんですよ!!」

それは此処も同じだ。
深くて終わりはない。
誰もが望む永遠の暗闇。
「あ!後は、スカイツリーとか‥でもアランカルって死神と同じで空飛べるし…やっぱりミスドのドーナツ食べたりサーティーワンのアイス制覇かなあ。」

「待て…お前は何を言っているんだ?」

「だから、此処から出ていけたらウルキオラさんとやりたい事話してるんです。」

女は何故俺を見てそこまで笑顔を見せるのだろう。
そして俺は如何したらいいのだろう。
俺が言えるのは皮肉しかない。

「出ていけたら?出れる訳がないだろう。お前は既に藍染様のもの。万が一、あの死神が助けに来たとしてもお前がここから出られる確率は無い。」

「どうして?此処に入って来れたんだから帰れるよ。でも私は独りで帰りたくない。ウルキオラさんと居たいの。」

女の言っている事が理解できない。
俺といたい?
「場所は何処でもいいんだ。だから…うーん。ウェコムンドで出来る楽しい事って無いかなあ。」

女は何時までも俺を見つめる。
楽しい事?
この世界にある筈がない。
どうして女はこんなにも光っているのだろう。

「ウルキオラさん。約束してくださいね。私と一緒に一度だけでもいいから…。」

女に頬を触れられた瞬間。
俺の世界は消えた。


華が咲き、白い世界に黒をうつ。
華は咲き乱れ、白い世界を壊していく。
俺は彼女を壊してしまうだろう。
こんなにも心が痛むのに。
君に触れられた時、俺は俺じゃなくなる。



「笑い合って下さいね。」

その約束を俺は忘れない。






ほら。叶ったじゃないか。
最後に俺が見た君は、泣いていたけど笑っていた。
俺は笑った。
心の底から。
だから君の夢は叶った。


俺の夢は…。
叶わなかった。
でも約束を果たせてよかった。


いつか君に会えたなら言葉にして伝えよう。
俺は君を傷つけるかもしれない。
君を泣かせるかもしれない。
でも俺は、君を笑顔にしてみせる。
だから、一緒にいて欲しい。
俺にその輝く笑顔を見せて欲しい。



誰が想像しただろう?
馬鹿な夢を俺は見ている。
そしてその夢を未だに思い続けている。
再開の時を待ち、笑っているんだ。
この約束を覚えていてくれ。
今度は、君が俺の約束を果たしてくれ。


俺は君を愛したい。
君を護りたい。
君と居たい。
これが俺の約束。
君を縛る約束。

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