薄桜鬼〜沖千〜long

□6. 覚悟
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元治元年、10月。
参謀、伊東甲子太郎入隊。
彼は尊王攘夷派。
新選組は佐幕攘夷派。
藤堂平助の仲立ちで新選組に入隊するが、のちに油小路の事件をおこしてしまう。
彼が新選組を変える礎となったのは言うまでもない。




「あら〜近藤さんも冗談がうまいかたですわねぇ。」

「あはは。伊東さんには敵いませんなぁ。」

近藤と伊東は酒を飲みながら仲良く雑談している。
それを土方は目をふせて聞いていた。
襖の外から聞いていた沖田は溜息をつく。
彼のことは嫌いだ。
斎藤や平助はともかく永倉も原田も好きではないと言っている。
全くその通りだ。
彼は嫌な目をし、近藤と本当にわかりあおうしていないだろう。
近藤は人がいいからすぐに人を信用してしまう。

(土方さん・・・。本当に何もしてくれないのかな。)

沖田は苛立ちながら思った。
あの鬼の副長が今度は何もしないとはどういうことだ。
考えていても仕方がないので沖田は庭に出た。綺麗な菊の花が咲いているところがある。
沖田は花が好きだった。
いい香りはするし千鶴に似合いそうだからだ。
沖田は月の光に照らされている菊を見、微笑んだ。
その時ーーー。


「あなた隊士ではありませんわよね?」

「え?」

千鶴の声がする。
そしてあの男の声が。
沖田は刀で菊の花を刀の上に乗せ、伊東の喉元につきつける。

「男所帯で華がありませんから。」

「まぁ。頂いておくわ。」

伊東は不敵に微笑んで去って行った。

「総司。やりすぎだ。」

「ただの座興ですよ。」

土方が部屋から出てきたので沖田は笑って見せた。
土方は千鶴に平助からの言伝を言い、そこから立ち去った。




「沖田さん。あの・・・。ありがとうございます。」

千鶴は頭を下げる。

「ううん。僕はね。あの人が嫌いだから。千鶴ちゃんは好きだから助けたんだ。」

「はい・・。」

千鶴は苦笑まぎれに笑った。

「千鶴ちゃん。困ったことがあれば言いなよ。僕が斬ってあげるから。」

千鶴は可愛く頷いた。

「可愛いね。君は。」

沖田は彼女を優しくなでた。




ああ。彼女の悲鳴が聞こえる。

恐怖している声。聞きたくない。

仲間が彼女を傷つけてもたとえ仲間でも僕が斬ってしまうだろう。



彼女には泣かないで欲しい。彼女は弱いから。



僕が守ってあげないと。



「何してるんですか?山南さん。彼女怖がってますよ。」

彼女の悲鳴を聞いて駆けつけてみれば山南が薬を飲んでいた。
沖田は決めていた。
彼が狂うなら自分が閉ざしてやろうと。



彼女はやはり泣いてしまった。
山南が倒れたから?
怖かったからか?
何もわからなかった。


沖田は彼女が寝ている部屋に夜中、こっそり入り込んだ。
暗殺を何度も経験している沖田は夜でも目がよく見える。
彼女に近付くと彼女はすやすやと眠っている。
可愛いい。
沖田はふっと笑った。
そして耳元でそっと囁く。

「頑張ったね・・・。」

彼女はいつでも頑張っている。
見習わないと。
この潜む病魔と闘わないと。

ここにはいられない。
闘えない。
護れない。



そうだろう?


「千鶴。」


沖田は千鶴の頬に口づけて部屋から去って行った。
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