薄桜鬼〜沖千〜long

□5. 確信
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「おはようございます。土方さん。」

「おお・・・おう。」

土方は笑顔で挨拶した千鶴を見た。
何か知らないが妙な声がでてしまった。

「どうかしましたか?」

千鶴が土方の顔を覗き込む。

「何でもねぇ。」

土方は冷静に言った。
焦ってはいないが気になる。
あの沖田総司が惚れた女。
あの総司が。
確かに剣や殺人については新選組一だが性格に難あり。
何度土方がやつに屈辱を思い知らせれたか。
あいつを止められるのは近藤だけで土方は何もできない頑固さというか・・・。
姉も姉で口喧嘩で勝てるわけもなしで・・・。

「お前も大変だな。」

「え?」

土方は思わずつぶやいていた。
あの総司に気に入らたのではそう簡単に逃げられないだろう。
もしかしたらここに来たことより大変になる。

(どうしたもんか・・・。)

近藤に相談すればもしかしたら総司は千鶴を諦めるかもしれない。
だが総司が近藤でも無理だったなら彼はここにいれなくなるかもしれない。
隊士の数が増えていってはいるが総司のような天才は新選組には必要だ。

「そんなとこで何してんだ?二人とも。」

不意に声がかかる。

「平助君!おはよう。」

千鶴は明るく挨拶する。

「うん。おはよー。土方さん・・・そこ邪魔だって。」

「あ?うるせえな。」

土方は舌打ちしながら広間に入っていく。

「・・・朝から鬼だな〜。」

平助は苦い顔をして言う。
千鶴は少し苦笑した。








土方は食事の時も考えていた。
総司は千鶴が好きだ。だが彼女はどう思っているのだろうか。
もし彼女が思っていたなら二人の関係は恋人ということになる。

(まぁ。あんなしっかりした女があいつを好きになるなんてことはない。)

土方は確信していた。
千鶴が来てあと数か月で一年。
彼女は弱音も吐かないし、池田屋ではよく働いてくれた。
最近では食事やお茶も入れてくれるし役に立っている。
まぁ新選組のためなら殺すが。
総司の女になってしまったらそう簡単なもんじゃない。

(よし。決めた。)

土方は千鶴に聞きに行くことにした。






その頃。

「山崎君〜出ておいで〜。」

沖田は明るい声で屯所を歩きながら叫んだ。

「何をしている。」

横の部屋から斎藤の静かな声が聞こえた。

「あ。一君。ねぇ。山崎君知らない?」

「知らぬが・・何の用だ。」

「うん。ちょっとね。」

沖田の異常なほどの笑顔に斎藤は眉を寄せた。

「総司・・・。あんた最近稽古をさぼっているそうだな。」

「体調が悪いから禁門の変に行くなと言ったのはどこの誰?」

「・・・副長・・だが。皆、あんたの稽古を受けたがっているぞ。」

「うそだぁ。そんなの新隊士だけでしょ?僕に泣かされた子が何人いると思ってるの?」

「稽古で泣くような阿呆は新選組には必要がない。そういう輩をふるいにかけるのも我らの仕事だ。」

「・・・・斎藤君ってほんっとクソ真面目だよね〜。」

「あんたが不真面目なだけだろう。」

「それはそうかも。」

少し沈黙が流れる。
斎藤は刀の手入れが終わったらしく立ち上がる。

「どこに行くの?」

「あんたがやらない稽古だ。」

斎藤の少し嫌味な言い方に沖田はおかしくて笑った。






「本当にどこにいるのさ。今日に限って出かけてたり?」

沖田はぶつぶつ文句を言いながら歩く。
そしてついに見つけた。

「山崎君!」

襖の隙間から見えた山崎に叫ぶ、勢いよく襖を開けると・・・・。

「あれ?沖田さん?」

かわいらしい千鶴の声。
何故、山崎の部屋に山崎と共にいる?
沖田は笑顔を黒いオーラに変えた。

「何してるの・・・・千鶴ちゃん・・・。」

「や、山崎さんに医療の勉強を見てもらってたんですけど・・・沖田さん?」

沖田のいつもと違う雰囲気に千鶴は恐る恐る言う。

「山崎君・・・君はどこまで僕を怒らせたら気が済むのかな?」

怒りオーラばりばりの言葉に山崎は何もないように言う。

「俺は雪村君に勉強を教えていただけですが・・それで沖田さんが怒る理由がわかりかねます。」

「君・・・しらばっくれる気?」

「ああ。あれのことですか。俺は新選組と沖田さんのことを考え報告したまでです。」

「それ以上言ったら殺すよ。」

「??」

千鶴は訳がわからず沖田と山崎を交互に見る。

「君が余計なことして僕がここにいられなくなったらどうするの?」

「そんなことにはなりません。あれは単なる報告であって決めるのは副長と局長ですから。」

「いちいち腹が立つ言い方だね。」

千鶴は感じた。
この空気が痛い。
しばらくこの空気が続くと沖田は千鶴の手をぐいっと引っ張り連れ去った。






「沖田さん!待ってください!い、痛い!」

千鶴の叫びも聞かずずかずかと沖田は手を握り千鶴を連れ去る。
やがてついた場所は千鶴に与えられた部屋だった。
沖田は千鶴を押し倒し、千鶴を泣きそうな顔で見た。
千鶴はその顔を見て自分は間違ったことをしたと思った。

「僕がいないとこであんな危険な男といたらだめだよ。僕、もう待てなくなっちゃうよ。」

そういって沖田は千鶴の胸元にそっと触れ、首筋に舐めるような口付けを落とした。

「ん!!沖田さん・・・。ごめんなさい!」

千鶴が謝ったのを見て沖田は微笑む。
そして唇に口づけを落とす。

「あ・・・・っっ・・・んん・・。」

角度を変えて息ができなくなる口づけに千鶴は気を失いそうだった。

「これ以上しても許されるよね?」

「へ?」

沖田の荒い息遣いが聞こえる。
そして沖田は少し乱暴に千鶴の着物を器用に脱がしていく。

「沖田さん!ダメです!」

千鶴の胸をサラシをほどいていく沖田に千鶴は叫んだ。

「じゃあ。もう二度と山崎君と二人きりにならないって誓う?」

こくりと頷く。

「ほかの男も絶対だめだよ。わかった?」

こくり。
「君は僕のものになるんだよ。覚悟してね。今日は残念だけどここまで。」

沖田に解放され、油断して目を閉じると再び深い口づけをあびさせられる。
千鶴はしばらく身動きできずやはりその日眠れなかったという。
そしてひそかに襖から見ていた土方も衝撃すぎて眠れなかった。
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