薄桜鬼〜沖千〜long

□3.成功
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「なぁんだ。幕府の方々がら直々に密令受けるなんて。これじゃ暗殺じゃないじゃないですか。」

「何大声で言ってんだこの馬鹿!密令の意味もわかんねぇのか!てめーは!」

沖田のとぼけた言動に土方は鬼の形相になる。

というのも今日、九月十四日。
会津藩の者に土方と近藤が呼ばれ、芹沢の暴行事件により芹沢の逮捕令状が出されたのだ。
そこで二人の命じられたのは芹沢の処罰。密令とは公にぜず始末することだ。

「で。トシ。いつ決行する?早いほうがいいと思うのだが・・・。」

近藤は顎に指をやった。

「俺もそう思うよ。あいつはな。
危機感がねぇんだ。最近は酒を毎日いれてるからな。
だからいつでもいい。」

「うむ・・・。」

近藤は難しい顔をする。

「俺が考えてんのは宴会を開こうと思う。俺も同席する。ほろ酔い気分のあいつを屯所に持ち帰って・・・斬る。」

その場にいた山南、原田は頷いた。

「それが一番いいと思うぜ。あいつなら簡単に引っかかるだろうよ。」

「そうですね・・・。明後日でいいんじゃないですか。明日は・・・。」

「新八さんには話さないんですか。」

沖田の冷めた声にびくりと皆が反応した。
土方は少し息を吐いて言った。

「あいつは同門ってことでわりと芹沢と仲が良かったからな・・・。明日話すか。」

「まぁこれから消すのに反対されても迷惑ですけどね。」

「あいつはそんなことしねぇよ。わかってるだろうさ。」

土方の厳しい声にこの場はお開きになった。








翌日。
実行隊と永倉新八は近藤の部屋に集まった。

「何だよ。土方さん。こんな改まってよ。」

永倉は親友の重い表情や土方の機嫌が悪い表情を見ながら首をかしげた。
土方は永倉を見つめ、言った。

「実はな。昨日、会津藩から芹沢の処罰を命じられた。」

「・・・マジか?」

永倉は少し驚いた様子で横にいる原田を見た。原田はゆっくりとうなずく。

「そうか・・・いやわかってたよ。いずれこうなるってことはな。」

「永倉君・・・。」

「俺は近藤さんについていくからよ。だから俺のことは心配しねぇでくれ。」

永倉は少しだけ悲しそうだったがふっと笑って部屋から出て行った。


「新八さんの考えてること・・・僕にはわかりません。」

沖田は上を見ながら呟いた。

その場の誰も沖田の言葉に反応できなかった。確かに芹沢のことは皆よく思っていない。
けれど新選組と名乗ることができることになったのも芹沢のおかげだった。
あの政変で芹沢が笑って進み出なければ新選組の手柄となることはなかった。
永倉にしてみれば同志を同志が斬ることになるのだ。
それほど悲しいことはない。









そして九月十六日。
島原の角屋で妓女総揚げの宴会が開かれた。
芹沢をはじめ、土方と、平間、平山という隊士が同席し、芹沢は三人と共に早めに八木邸に戻ると角屋の妓女お梅と平間の馴染みの男と共に宴会を再開する。

やがて夜中になり酒に酔った芹沢が眠ると土方はふすまから様子をうかがった。

「どうですか?眠ってます?」

後ろから沖田と原田、山南が刀を持ち構えていた。

「ああ。あれだけ酒を飲めばな。いいか。部屋にいるものは残らず殺せ。一人も逃すなよ。」

「ひ、土方さん・・じゃあお梅も・・・。」

「ああ。あの女は芹沢の手中だ。媚を売るいやらしい女だった・・・。原田。わかってるな。」

女であるお梅を斬ることにためらう原田に土方はしっかりと言う。

部屋では平間とお梅、芹沢が眠っていた。

「平山はどうします?別室ですが・・・。」

山南が土方に聞いた。

「はむかうようなら斬れ。とりあえず部屋にいる奴は片づけることだけ考えろ。いいな。」

三人は頷く。
やがて土方はふすまを開けた。

「いくぞ。」


三人は勢いよく部屋に襲撃した。
沖田は起き上がった平間が悲鳴を上げる前に平間の首と胴体を切断した。血が溢れ悲鳴は届かなかった。


「きゃーーーーー!どうかおた・・。」

お梅は大声で叫んだ。
沖田は舌打ちしお梅の元にかけたが土方が首を突き刺したため息絶えた。

芹沢は刀をとろうとしたがかなわず、隣の八木夫婦の眠る部屋に入り込んだが原田と山南によって裸のまま殺された。
八木夫婦は悲鳴をあげたが原田と山南は何も言わず土方の元へかけた。

「殺ったぜ・・・土方さん。」

「ああ。…総司。」

「だめですね。逃げられちゃいました。追いかけますか?」

「いや。いい。町で斬っても問題になる。明日、盛大に葬式しねぇとな・・・。」

土方は部屋に転がる死体を見ながらため息をついたという。





この事件は長州藩がやったということで丸く収められた。
九月二十日。
平間と芹沢の葬式は神聖に盛大に執り行われた。
芹沢の墓は壬生寺にある・・・・。









「ありがとうございました。芹沢さん。」

沖田は悪魔のような微笑みをして芹沢の墓参りをし、二度と同じことをすることはなかったという。
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