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□第15話
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つい先刻、“妖月光”で出会った狐の妖と、今、目の前に居る人は、同一人物だと知った。
わしと秀元は二人並んで座り、前には真紀が座っている。
なぜ、わしに会った時に“真紀”だと名乗らなかったのだろうか…
台所で振り返ったときに驚いたのは、後ろから声を掛けられたから、という理由だけだと思っていたが…
わしのことを知っていた驚きも含まれていたのだろう。
そう思うと、眉間に皺が刻まれてゆくのが、自分でも分かった。
今話すと、怒りをぶつけてしまいそうだったので、しばらく黙っていると、最初に沈黙を破ったのは秀元だった。
「真紀ちゃんとぬらちゃんの先刻の話から推測すると、二人は二週間前に妖の飲み屋“妖月光”で会ってるっちゅうこと?」
『…はい』
その返事を聞いた秀元の眉間にも皺が寄る。
同様に、わしも気になることがあり、顔をしかめた。
秀元の言った通り、“妖月光”は妖の飲み屋だ。
人間が入るのは不可能。
ということは、そのことに疑問を持たなかった秀元は、真紀が半妖だと知っていたことになる。