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□第9話
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妖月光に行った夜、使用人達にはバレること無く、無事に屋敷に着くことができた。
あの日から一週間…珱姫の所を三回程訪ねたが、まだぬらりひょんとは出会っていないようだ。
京入りしてから直ぐに珱姫に会いに行くわけじゃないのね…
今の所、攻め込んでくる京妖怪も居ない。
「真紀ちゃん、真紀ちゃん」
……ん?
私は今、左右に多くの屋敷が並んでいる道を歩いている。
周りに私以外の人は居ないのに、声がする。
「真紀ちゃん、こっちやで!こっち!」
後ろから声がするので、振り返り注意深く見ると、屋敷の扉が少し開いていて、そこから一人の男が顔を覗かせていた。
『秀元さん…何してるんですか?』
「何してるって、君のことを待ってたんやで」
『私を?』
「そうそう。約束したやろ?覚えとらんの?」
『覚えてますよ、もちろん。だからここまで来たんですから』
「それもそうやね。でも、吃驚したわ。僕の屋敷通り過ぎて行くんやもんなぁ」
『すみません;ちょっと考え事をしてたので…;』