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□第8話
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面白い女じゃ…
先刻、妖月光に来た狐の女は、見ているだけで実に面白い。
わしと目が合った瞬間、勢い良く目をそらし、周りを見回したかと思えば、今度は自分を見て何か考えている。
その後、店員が運んできた酒を飲み、やっと落ち着いたのかと思った……
が、女に近づく二つの影があり、わしは眉を潜めた。
どうやら、酔っ払っている男に絡まれているようだ。
席が近いため、ここまでかすかに声が聞こえてくる。
………
『すみませんが、遠慮します』
凛とした声が、賑やかな店の中で、やけにはっきりと響く。
「総大将、どうかしましたか?」
「まだまだ酒はあるぞ!」
酒を飲む手が止まっていたわしに牛鬼と狒々が話し掛ける。
「あぁ、少し面白いものを見つけたんじゃ」
「総大将!大人しく飲んでいて下さいよ!!」
「なんじゃ、カラス天狗。あまり小言を言っていると、早く年をとるぞ」
「誰のせいですか!?」
まだ横で小言を言っているカラス天狗は無視する。
どうやら周りの客も騒ぎに気付いたようだ。
先程までとは違う賑やかさが店内に広がっていた。