Main
□第4話
1ページ/4ページ
城をしばらく出たいと言うと、町の様子を見るのも良いだろう,と言い、意外にも簡単に大坂城を出る許可を貰うことができた。
好きに出歩けるように、できるだけ城から離れた屋敷に住むことにした。
『母様、人間の使用人を何人か連れて行っても良ろしいですか?』
「人間なんぞで良いのか?」
『町に妖を連れて行くと目立ってしまいますので;』
「ほほっ、それもそうじゃの。好きなだけ連れて行くがよい」
『ありがとう、母様』
もしかしたら、母様に会うのはこれが最後かもしれない。
考えは理解できないけど、私を生んで,娘として可愛がって育ててくれたのはこの人なのだ…
私は精一杯の笑顔で感謝の言葉を口にした。
「椿姫、いつでも好きな時に帰って来るのじゃぞ」
『はい』
次の日、私は五人の使用人を連れて大坂城を出た。
…………
半年が過ぎ、町での生活にも慣れ、平穏な日が続いている。
そして私は今、屋敷を出てある所に向かって歩いている。
三十分ほど歩き、立派な造りの屋敷の前で立ち止まると、一人の男が近づいてくる。
「姫様、お久しぶりにございます」
『お久しぶりです、是光さん』
以前、屋敷を訪問してから、もう一月程過ぎている。
「珱姫様のお部屋まで、ご案内します」
『えぇ、お願いします』