☆短編集〜銀切華〜
□ 溺れた魂にTrick(悪戯)の魔法をかけて。
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Trick
(高校生銀高。銀時が魔法使い設定)
『あのさ俺、魔法使いなんだよね』『はぁ!?』
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『おーい晋助』
『遅ェ』
『わりぃわりぃ。寝坊したから姿消して空飛んで行こうとしたら積乱雲に突っ込んで濡れちまったから着替えてきた』
『…………相変わらずだな…』
遅刻の理由を当たり前のように笑顔で話す彼は坂田銀時。俺の恋人で魔法使いである。
なんて非現実的な話だろうと最初は俺も信用していなかったのだが今では普通に返事を返せるくらいには成長した。
『んで、わざわざ俺の家まで来てする用ってなんなんだ?』
『ふふふ…晋ちゃん今日何日か知ってる?』
『何日って……10月31日だろ』
人の質問に質問で答えるなと思いながら部屋に置いてあるデジタル時計に目をやり、そう答えた。
『Trick or Treat?』
『は……?』
最初、銀時が何を言っているのかわからなかったがよく考えてみると今日、10月31日は世間ではハロウィンと呼ばれている日だったなと思った。
親の事情で家で一人のことが多い俺はそれをすっかり忘れていた為、菓子など買ってきていない。
勿論、普段から甘いものなど食べないので家には一本当に何一つない。
『お菓子くれないと悪戯するぜ』
『今日がハロウィンだって忘れてたから用意してねェ。今買ってくるからちょっと待っt
『いやいいよ。Trick(悪戯)するから』
そう言ってニヤリと笑った銀時はパチンっと指を鳴らせた。
するとボフンと音を立てて煙が現れ、俺の周りを漂い始めた。
『げほっげほっげほっ……なんだこれッ』
『よっしゃぁぁ念願の晋ちゃんの胸だああ』
煙が引くと俺は自分の胸の辺りに妙な違和感を感じた。恐る恐る見てみると……そこには男には無いはずのものがあった。
『ちょっ……銀時ッ揉むな!!』
『変身の術は10分で時間切れちまうんだから少しくらい良いじゃねーか』
不覚にも感じてしまう自分に恥ずかしさを覚えながら、胸に引っ付いて離れない銀時の頭に一撃かまして引きはがした。
『どういうことか説明しろ』
『本物のTrick(悪戯)だよ』
キリッと顔を決めて言う銀時をもう一発殴りたい衝動を押さえつけ、次の言葉を繋ぐ。
『そうじゃねぇ何で俺を女にした』
『前々からやりたかったんだけど良いタイミングがなくてって……怒ってんのか?』
真面目に怒っていることに今更気づいたらしい銀時は俺の目を見つめてそう言った。
『当たりめェだろッ……お前、やっぱり女がいいんじゃねェか!!』
俺を女に変えたがっている。それはつまり男は望んでいないということ。
『そりゃあ…な。男なんだから仕方ねェだろ。俺は別にホモな訳じゃないし』
『じゃあなんで!?』
俺を好きだと言ったんだ……?
『俺は男とか女とか関係なく、高杉晋助って人間が好きなだけ。魂に惚れたっていうか』
紅い瞳が真剣に俺を見つめる。
魂なんて俺には良く分からないけれど。
『納得してくれた?』
『あぁ』
『じゃあTrick(悪戯)の続きしよっか』
『ちょっ……待っ!?』
許してしまう。嬉しいと思ってしまう。
そんな俺の魂はもう……
お前に溺れてしまっているのだろう。
溺れた魂にTrick(悪戯)の魔法をかけて。
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