☆短編集〜銀切華〜

□会いたい、会いたくない
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「全力でてめぇをぶった斬る」




あの言葉を言われてから1ヶ月もたたないある日。

俺は用事でかぶき町を訪れた。


用事、とはいってもこれから取引をする相手の視察も兼ねて酒を飲むだけなのだが…



ほどよく酔って、月明かりよりも街明かりが眩しい繁華街を歩いていた。


酔っているからか、それとも他の理由なのか……

それはわからないが…


気づけばその人混みの中で、銀色を探していた。




次に会ったら殺される。

それでも一目見たい、会いたい


そんな気持ちが募る。



ここはかぶき町だから

あいつがいるかも知れねぇ


それだけの理由で人混みを眺め続ける。



しばらくして馬鹿馬鹿しくなってきて、もう無駄な行為はしないように地面を向いた。


地面を眺めると自分の歩く1歩1歩が、とても重くゆっくりに感じた。




このまま進んだところで俺はどうなるのだろう?



先生を失い。


仲間を失い。


そしてあいつも失った。



孤独…………





『会いてぇよ、銀時。』






そう呟いて顔を上げた……瞬間

懐かしい匂いが横を掠めた。



いつもの匂い。


甘い匂い。


俺の大好きな匂い。



…っ…………



『銀時っ……』



振り返ると銀色。

お前がいた。



だけど俺なんか見えないかのように


『銀時っ!!』


声なんか聞こえないかのように



遠ざかっていった。







なんでだよ……………


お前の目にはもう、俺は写らないのか?



なぁ、殺してもいいから


お前の目に俺を写して。







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