☆短編集〜銀切華〜

□雨の日の黒猫
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お前が愛してくれっから今の俺がいるんだよ








銀八と喧嘩をした。



理由は………


いつもみてぇーに喧嘩について叱るやつがうざくて俺が殴ってそのまま逃げてきたからだけど


どうやって謝っていいのかなんて俺にわかる訳もない。



つくづく馬鹿なやつだな、俺は……




そんなことを考えながら街の裏路地を雨の中傘もささずに歩いていると




ニャー


下の方から鳴き声がした。



見ると……黒猫が寂しそうな恨みの篭ったようななんとも言えない目で俺を見ていた。



『俺みてぇーだ………』



猫の目とその瞳に写った自分の目があまりにも似ていたから


『…ハハッ』


俺はその猫の頭を撫でながら自嘲気に笑う。





その直後……後ろから鋭い殺気を感じた。



咄嗟に避けると自分の頬スレスレを鉄パイプがかすめていった。



『てめぇは…………』



敵の数は十数人……


少し油断した間に周りを囲まれてしまっていた。




こいつらは……銀八に叱られた喧嘩の相手。



『油断したのがあだになったな……』



そう言って一斉に鉄パイプで殴りかかってきた。



ガッ


ゴッ……………



俺はそれを避けようとしたが敵の数が多すぎる…………



『……チッ………』



さっきの猫は逃げたらしい。



ガンッ


ブンッ……



『グッハ…ッ………』



もう全身血まみれになっていたが


今、腹にくらった一撃が重くて



俺は地面に倒れた。




『高杉晋助……お前もここで終わりだ……』



意識が朦朧として


景色が赤色に染まっていた。



相手の鉄パイプが自分に向かってくる音がする。


それを聞いて、目を閉じた。







『誰が終わるって?』





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