☆頂き物

□紅色の瞳は氷のように深く僕の心を傷つけていくばかり
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銀八の眼は紅色だ。見つめているだけ、だけどとても綺麗だと、思う。 見ていて飽きない。

「……晋ちゃん、そんなに見られると穴開いちゃう、俺。」
「いいことじゃねぇか」
「ヒデェなオイ。」

銀八はこたつの中に入って煙草を吹かしながらテストの採点をしている。いまちょうど俺のテストの 採点が終わったらしい。ぺろりとめくってみれば100点の文字。

「晋ちゃんさァ、真面目に受ければ100点なんてお手の物なんだか授業出ろって。」
「面倒くせェ。どうせ先生に教えてもらったところの繰り返しだし。」
「松陽先生だって忙しいだろうから入り浸んなよ。」
「………」

その言葉に、身体が固まる。ぴしり、と。銀八が一瞬こちらを見た。採点する手を止める。

「高杉、」
「……分かってらァ」
「………。」

分かってる、分かってる。分かってる、分かってるんだ。

「分かってる、うるせェ」

銀八はしばらく俺を見た後、ふぅんと興味なさげに、またテストの採点を始めた。そして何が分かっ てんだよ、とぼそりと呟く。その言葉に、またからだが固まった。

「……………っ」

銀八の手が、こちらに伸びる。ぱさりと紙のおちる渇いた音がして、視界が眩んだ。

「松陽先生に依存して、生きてるのは高杉お前だろ?」
「……っ!」

いきなりのその発言に、目を見開く。理解していてでも理解していなかったことを、直球で言われて しまって、言葉が出ない。

「無残にさ、ひとりでいきることも出来ないで。ずっとずっと依存して、」
「やめ、ろ…………」
「松陽先生がいなかったら高杉は息出来た、今の今まで生きてた?結局お前は弱虫で誰かがいないと ダメなんだろ?それが松陽先生なんだろ?お前の「呼吸」は「松陽先生」であって、」
「やめろ…!」

怖かった、理解されたくなかった。理解されたくない相手に理解されたのが、嫌だった。覚えている はずのない記憶が、刻まれていないような記憶を思い出して、

「先生がいないこの世が、」

「わずらわしくて、」

「壊そうとしたのに壊せなくて」

「先生のために死んでいったのはお前だろう?」

灰色の空だった。灰色の空に真っ赤な炎が、愛情を教えてくれた村塾を焼き焦がしていく。松陽先生 は穏やかに笑って、銀時に遺言と言えるものを託した。

それでも取り返そうと、したけど、戻ってきたのは、首。

「結局はぜぇんぶ高杉の独り善がり。生まれ変わっても尚、松陽先生に依存、している高杉の、愚か なところ、」

綺麗だと思っていた紅色の瞳がこれほど冷酷に見える、なんて。

「俺は好きだけどね、そんな晋ちゃん」

紅色の瞳は氷のように
深く僕の心を傷つけていくばかり


(それでも魅了され、尚焦がれるばかり)


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少年は彼方へと再び消えたの篠原愛咲様より

3万打リクエストで頂きました。

銀時の目の描写をこれまで素敵に出来るなんて……本当に感激しています。

ありがとうございました。



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