裏表アーカイブ
□#6
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「はい、給料」
『よっしゃァ!!』
裏表アーカイブ#7
やりました。
散々減給だと言われてビクついてたあの日々。
ふ。そんなのもう関係ない。
佐倉南、ついに初給料ゲットだぜ!
と、いうわけで、今日という休日を満喫するため、私はラーメン屋さんに向かった。
こっちの世界に来てからラーメンなんて食べてないよ。ずっと食堂の残り物くらいしか食べてないよ。
思い出して悲しくなったが、小さな幸せに目を向けることは大切なことだと思います。
メニューを開いて一番最初に目に入ってきたのは、“ジャンボラーメン3分以内に食べれたら食事代無料”という見出しの文字と、写真からでも充分にうかがえる特大ラーメンの写真だった。
誰が一体挑戦するんだよ、こんなの。食べきれるはずがないでしょ、この量。
無茶な量のメニューに呆れつつも、私は店員さんを呼ぶ為に辺りを見回した。
『えーっと、店員さん店員さん……』
おいおい。この席、店員さんのいるカウンターからめっちゃ離れてるじゃないか。
私の席からじゃ、入れ歯と必死に戦ってるお婆さんと、倦怠期のカップルと、ありえないボリュームのラーメンに挑戦してるチャイナ娘ぐらいしか見えねーぞ、コノヤロー。
……。
『入れ歯と必死に戦ってるお婆さんと、倦怠期のカップルと、ありえないボリュームのラーメンに挑戦してるチャイナ娘ぐらいしか見えない……ってチャイナ娘ェェェ!?』
え、神楽ちゃんだよねアレ。あの小さい体に入りきるとは思えない量のラーメン食べてるけど神楽ちゃんだよねアレ。
『……か、神楽ちゃんがいるってことは……』
神楽ちゃんの隣に、とても見覚えのある銀髪が見えた。
『……』
……うん。他のお店に行こう。銀さんに会うのは何かと面倒臭いよ。
ラーメンを食べずに帰ることには後悔が残るけど……。せっかくの初給料を有意義に使う為だ。仕方ない。
私は、もしもの時にと持ち歩いていた風呂敷(何かカッコよくね?)で頭を隠し、コソコソと店を出───
「あれ、南がいるアル」
「あ?どこに───って何で風呂敷頭に巻いてんの、アイツ」
ることかできませんでした。……何故!
『私の変装が見破られたなんて認めたくない!』
「いや正直、不審者にしか見えなかったけどな」
くっ……!こんな天パに不審者呼ばわりされるとは……!
悔しがる私に、銀さんは自分の隣の席をとんとんと叩いた。
「ほら。偶然こんな所で会ったんだし、座れよ」
『神楽ちゃーん、隣いいかな?』
「ひどくね!?」
私は、ひたすらにラーメンを食べ続ける神楽ちゃんの隣に座った。もうバレてしまったならしょうがない。銀さんに何かおごらせよう。
『ところで、今日は三人なんですか?』
「いえ、そろそろ姉上が───」
「こんにちは」
新八君が何か言いかけたのと同時に、私達のテーブルの前に女の人が来た。
「あら?この子はどちら様?」
私を見て不思議そうな顔をしている女性。
……誰コレめちゃ美人じゃないすか。
「南さん。僕の姉です」
「志村妙です。すまいるっていうお店で働いてます」
新八君により紹介にされたお妙さんは、にこやかな笑みを浮かべた。
『は、ははは初めまして。佐倉南です。真選組で女中をやってます』
お妙さんの綺麗な微笑みに動揺しつつも、何とか自己紹介を終えた。ていうか、すまいるってどんなお店なんだろ───
「ええっ!?南さんって真選組で働いているんですか!?」
『え?そうだけど……あ、まだ言ってなかったっけ』
そういえば、初めて銀さんに会った時からずっと教えてなかったなあ。
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